米国の有力紙、ニューヨーク・タイムズが読者に勧める旅行先「2019年に行くべき52カ所」に、日本から唯一、香川県の直島をはじめとした「瀬戸内の島々」が選ばれ、7位にランクインした▼過疎の島だった直島は、通信教育会社が約30年を掛けて芸術の島へと再生させた。国内外からの観光客は年間50万人にも達する▼芸術の核は、世界的な建築家安藤忠雄(あんどうただお)さんの作品群だろう。1992年に完成したベネッセハウスミュージアムや地中美術館などとても1日では回りきれない。建築物が地域の活性化につながる好例と言える▼安藤さんの著作「連戦連敗」(東京大学出版会)には、直島の話とともに宇都宮市の地下劇場構想がつづられている。大谷石の地下採掘場を「これほどの規模と迫力のものはいまだかつて目にしたことがない」と表現▼印象があまりにも強烈だったため依頼を受けたわけでもないのに計画を立てた。既存の地下抗の再利用ではなく、大谷石を計画的に切り出して最終的に地中建築を作り出す。しかし、何度か国に陳情したが許可されなかったという▼大谷地区で大規模陥没事故が発生して来月で30年。地域の景観が見直されて観光客は戻りつつある。直島のにぎわいを見ると、もし地下劇場が実現していたら違った風景になっていたかもと想像してしまう。