合唱の指揮をする内田さん=22日午後、栃木市惣社町の栃木刑務所

 2017年2月16日に84歳で亡くなった塩谷町出身の作曲家船村徹(ふなむらとおる)さんの作品に、約60年前、栃木刑務所(栃木市惣社町)に贈られた「明日(あした)に夢を」がある。忘れられた存在だったが関係者の尽力でよみがえり、22日、同刑務所内での音楽鑑賞会で、船村さんの三回忌に合わせ受刑者たちが約40年ぶりに合唱した。

 やがてくるくる

 明るい空を

 信じて強く

 生きましょう

 受刑者に社会復帰を促す言葉が、哀愁のある曲調に乗って聞く人の心を打つ。

 1958年、同刑務所を慰問した船村さんが、更生を目指す受刑者の姿に感銘を受け作曲した。その後、歌は出所者によって広まり、無断でレコード化されたこともあった。一方、同刑務所で歌われたのは、79年の船村さんの慰問時が最後となっていた。

 しかし昨年10月、船村さんの弟子内田繁(うちだしげる)さん(76)=栃木市都賀町家中=が偶然自宅で楽譜を発見。「思い出がよみがえった。これはみんなで歌わなければ」(内田さん)と、同刑務所合唱クラブのメンバーと歌を披露することにした。

 この日、9人が「明日に夢を」や同じく船村さんが贈った「思い川」など5曲を合唱。心を揺さぶる歌声に、涙を流す受刑者もいた。

 合唱した40代の女性は「『私たちは変わらなければならない』という気持ちにさせてくれる歌。(船村さんなど)応援してくれる人への気持ちを込めたかった」。指揮を終えた内田さんも「一番喜んでいるのは船村さんだろう」と笑顔を浮かべた。

 「明日に夢を」は今後も同クラブで歌い続けていくという。船村さんが思いを込めた歌は、これからも受刑者の心を支えていく。