大通りにある「宇都宮パルコ」(馬場通り3丁目)が5月末で閉店する。「県都の流行発信地」として、多くの若者の心をとらえてきた。パルコを愛してやまない宮っ子と共に、店の22年間を振り返った。
宇都宮パルコは1997年3月に開業した。「宇都宮にパルコが来る」-。都内などで若者ファッションをけん引していた大型店の進出に、多くの宮っ子が心を躍らせた。
■おしゃれを求め
109系など人気のヤングファッションをはじめ、紀伊國屋書店やタワーレコードなどをそろえ、若者を中心に集客。2008年にはデザートバイキングの「スイーツパラダイス」が北関東初出店し、話題となった。
「高校や大学時代、服がほしい時は必ずパルコに行った。行くだけで、おしゃれになった気分になりましたね」。宇都宮表参道スクエア内にあるセブンイレブン宇都宮馬場通り店のオーナー巻嶋直樹(まきしまなおき)さん(36)はこう懐かしむ。中学生の時にオープンしてから足を運び続け、今では仕事上の大切な“ご近所さん”となった。閉店が決まり、「学生時代を懐かしみながらパルコに通っています」と話す。
■来場者と幕引き
パルコは3月下旬から「閉店 ありがとうフェス」を展開。セールにとどまらず、来場者参加型や地元デザイナーとコラボした催しを企画している。
4階のレゴブロック展一角には、「宇都宮に残したいみんなのたからもの!」をテーマにした制作コーナーが設けられ、大型連休中、家族連れらが制作に励んでいた。他にも、来場者が絵付けした伝統工芸品「黄ぶな」の展示など、館内はスタッフと客の「ありがとう」であふれている。
パルコの上野一久(うえのかずひさ)店長(54)は「閉店発表後、多くの市民から『パルコで青春時代を過ごした』という声をいただいた。地域に支えてもらった感謝の思いを、最後まで発信し続けたい」と力を込めた。
■きっかけの場所
宇都宮パルコと共に人生を歩んできた人もいる。
2階で洋服のセレクトショップを営む奥村聖彦(おくむらきよひこ)さん(42)は20歳の時、オープンしたばかりのパルコに買い物で来たのが縁で、アパレルショップの店員として働くことになった。「ここにパルコがなかったら、アパレルの道に進んでいなかったかもしれませんね」と振り返る。
約8年働き、30歳で独立。昨年、メンズとレディース、キッズの3ブランドを1カ所で展開できる店舗を探していた時、パルコへの出店が浮上した。「テナントが次々に撤退していた時期で、『パルコがなくなるかも』といううわさもあった。でも、自分の道がスタートした場所に、ちょっとした手助けができればいいかな、とも思ったんです」
県都から、大きなともしびが一つ消える。だが、思い出は多くの宮っ子の胸で輝き続けるだろう。