品種開発、スパコン活用、民間連携… 独自の取り組みも

 品種開発、スーパーコンピューターの活用、民間との連携。気候変動への適応策を模索する自治体の中には、独自の取り組みを始めたところもある。下野新聞社の都道府県アンケートには、秋田や新潟など6府県が事例をつづった。

 静岡県は特産品のミカンで新たな品種を開発した。2019年度内に品種登録を申請するという。

 新品種は、高温多湿で発生しやすくなる「浮き皮」と呼ばれる症状が起きにくいのが特長。果肉と果皮が分離するこの症状は近年、県内で目立つという。秋の雨の増加や気温の上昇が背景にあるとみられ、担当者は「今後も環境に適応した品種開発を続けたい」と話す。

 アスファルトの熱吸収などで都市部の気温が上がる「ヒートアイランド現象」対策に、スーパーコンピューターを活用するのは埼玉県。海洋研究開発機構と連携して植樹や遮熱舗装などの効果を予測した上で、対策を講じる。9月開幕のラグビーワールドカップで会場となる熊谷スポーツ文化公園に、初めて用いた。

 企業などと連携を進める自治体もある。福島県は協力事業所を募って二酸化炭素の排出量削減目標を定めてもらっているほか、優れた取り組みを表彰。19年度からは「適応分野」を設け、暑さや風水害対策に取り組む事業所も募集している。

 京都府は16年度、防災や漁業、農業など府民に身近な分野での適応策をまとめ、ホームページなどで公開している。担当者は「(今後も)データに基づく分かりやすい情報提供を行っていきたい」と強調した。

専門家紹介 要望に対応 環境省 職員研修の内容も拡充

 環境省は、地域気候変動適応計画の策定や地域気候変動適応センターの設置など自治体の取り組みに関して、専門家を紹介したり人材育成を進めたりして支援する。2018年12月の気候変動適応法の施行から半年余り。策定や設置の現状を踏まえ「各自治体のタイミングに応じて取り組んでほしい」と求めた。

 下野新聞社の都道府県アンケートでは、適応への対策に取り組む上で「専門的な人材の確保」に悩む自治体が目立った。この状況に対して環境省は要望があれば、研究者の紹介などを進める考えを示した。

 人材育成の一環としては、全国の自治体職員の研修強化を図ったという。毎年実施していた「気候変動対策研修」はこれまで温暖化の緩和策が中心だったが、19年度からは適応の要素を多く取り入れた。

 アンケートでは、センターの設置などについて国の予算措置を訴える声もあったが、環境省の担当者は「現状では難しい」。「環境研究総合推進費などの予算措置はある」として積極的な利用を呼び掛けた。

地域性考慮し主体的に 法政大 田中充教授(環境政策論)に聞く

気候変動への適応における地方自治体の役割などについて語る田中教授=6日午後、相模原市内

 農業被害や気象災害、熱中症、水資源、環境の変化など気候変動がもたらすリスクは、すでに私たちの暮らしや地域の姿に影響を及ぼしている。そして将来に向かうほど、そのリスクが激しくなるという認識が、まずは地方自治体にとって必要だ。そういう社会に、いま私たちは生きている。

 各地域の特性や地理的条件、産業、人口構造などに応じて将来起こり得る影響の種類や大きさを評価し、具体的な対策を考える。気候変動への適応策は、地域の取り組みが基盤になる。

 下野新聞社のアンケート結果を見ると、都道府県レベルでは適応の重要性に対する認識は深まってきている。昨年の気候変動適応法の施行が大きい。

 ただ、従来の温暖化対策に関する計画を、とりあえず法に基づく地域適応計画と位置付けているケースが多くあり、自主的な中身がある自治体は限られる。法律が整備されたので、ひとまず形式を整えたというのが実態だろう。

 地域気候変動適応センターの設置状況に、ばらつきがあることが気になる。適応計画のような国のマニュアルがなく、自治体が何をすべきかが見えないまま法律に記された面もある。現状は多くの自治体が様子見しているという状況ではないか。

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 自治体にとって大きな課題なのは人材の確保。気候変動への適応策では、特に将来の影響を予測した上で、現時点でできる対策を講じることが求められる。しかも時間が進めば進むほど、影響が深刻になる長期的な課題でもある。