専門的知見や情報の集積が不足している地方自治体にとって、現状ではなかなか体制の整備が難しい面もある。国は人材育成や人材派遣などをサポートし、自治体側も、腰を据えて専門の人材を自前で育てていくという心構えが大切だ。

 アンケートには組織体制の課題を指摘する声もあった。都道府県ごとに対策分野の重要度が異なる。同じ自治体でも部局間で温度差が出てしまう懸念がある。加えて、いま起こっている問題への対応が優先されるので、将来的な長期課題は先送りされる傾向にある。長期的、継続的な視点で気候変動対策に取り組むためにも、拠点としての適応センターの役割は重要だ。

 自治体が早く情報を集めて着手、対処すれば、備える余裕ができる。例えば、雨の降り方の変化予測に基づき、いまから水資源管理に力を入れれば、将来の農業被害の軽減につながる。気象災害における水害対策も同様だ。取り組みの積み重ねが、適応力の差となって表れてくる。

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 適応と言うと、全く新しいことをやるように思われがちだが、そうではない。農業や熱中症、災害対策にしても、すでに行っていることが相当ある。その水準やレベルを変えたり、長期的に捉えたりして、足りない部分を補っていくということが適応策だ。

 一方、地域の特徴を反映した独自性のある適応策を考えるためには、自治体ごとの工夫や分析、評価が必要になる。それは自治体の責任を伴うことでもある。

 国が定めた対策であれば「国が決めたから」とやりやすいが、自分たちで必要性を判断し、事象ごとに細かく対応するということが地方行政は不得手だ。

 地域の暮らし、住民の命と健康に責任を持つ主体であるという認識に立ち返ることが求められている。気候リスクへの対応、すなわち適応は、住民の命を守るという地方自治の原点に戻ることでもある。

 首長の意識も鍵を握る。計画や組織をつくっても、そこにいかに魂を入れるか。首長の本気が伝わらないと、部局間の協力もうまくいかない。全庁的に気候変動対策に取り組めるかどうかは、トップの姿勢にもかかっている。

 【略歴】川崎市職員として23年間勤務し、主に環境・公害対策を担当。2001年から現職。法政大社会学部長などを歴任。専門は環境政策論。