■災害■ 治水の基礎力向上が大切

京都大防災研究所 中北英一(なかきたえいいち)教授

 

 気候変動が進むと、おととしの九州北部豪雨のような梅雨の集中豪雨が増えていく。長さ100~200キロ程度の局所的な線状降水帯がもたらす豪雨だ。全国的に増える傾向があり、これまではあまりなかった北海道や東北、日本海側でも起きるようになる。

 ゲリラ豪雨の危険性も高まるとみていい。台風は日本への到来回数は減るが、いったん発生すると、中心気圧が920ヘクトパスカル以下の強力なスーパー台風になる可能性が大きい。

 一方、昨年の西日本豪雨のような、3日間も停滞する大気のパターンが増えるかどうかは分からない。ただ、総雨量が増えることへの対策は必要だ。

 西日本豪雨では、長期間に広範囲でたくさんの総雨量があり、多くの山腹斜面や河川流域、ダム貯水池がたくさんの水をため込んでしまっている状況だった。まさに満身創痍(そうい)の状態だ。

 このため、その後の雨の追い打ちが土砂崩壊や洪水、ダムの緊急放流をもたらした。

 緊急放流を避けるには、ダムのかさ上げや、水位が低い時でも放水できるよう、より下部に放水口を設けるなど、少しでもダムにためる容量を増やしておく必要がある。

 また、たくさん水を放っても下流であふれないように河川の拡幅や堤防強化などに取り組み、治水の基礎力を上げておくことが大切だ。効率的なダムの運用のために、豪雨予測の精度を高めることも重要になる。

 災害現場での悲惨な状況を思うと、危ない所には住まないとか、少なくとも土砂災害や洪水などの危険性を知らずに住むことにならないよう、考えないといけない。

 西日本豪雨で被災した岡山県倉敷市の真備町地区も、もともと浸水するエリアだった。居住の自由はもちろんあるが、温暖化への適応という意味では、この部分を真剣に考える必要があると感じる。

 地方自治体はソフト面での対応、特に防災教育で担う役割が大きい。温暖化がよりシビアになるのは将来を担う世代だ。その世代の子どもたちが災害時の避難意識や身を守る力を付けているかどうかが一つの勝負になる。国や県の情報をうまく活用して、地域に合った教育の計画を立ててほしい。

 【略歴】2004年から現職。京都大防災研究所副所長、土木学会水工学委員長などを歴任。専門は水文気象防災学。

■企業■ 地方の再生エネに潜在力

日本気候リーダーズ・パートナーシップ 三宅香(みやけかおり)共同代表

 

 脱炭素を目指す企業グループ「日本気候リーダーズ・パートナーシップ」(JCLP)が発足した2009年ごろは、まだ日本でそれほど気候変動対策が盛り上がっていなかった。今は対策の必要性が世の中に浸透しつつあるという実感があり、感慨深い。

 一方で地球温暖化対策の国際枠組みであるパリ協定の目標達成を考えると、温室効果ガスの排出量の上限がどんどん迫っていることに焦りも感じる。

 17年にドイツで開かれた国連気候変動枠組み条約第23回締約国会議では、世界が日本に対し「もう(脱炭素を)やらないならいいよ」と冷ややかに見ている現実を目の当たりにした。企業としての温暖化対策の度合いが投資や取引の判断基準にさえなっている。

 JCLPの加盟企業数をみると、ここ数年で潮目が変わってきた。現在100社を超え、手応えを感じている。

 加盟企業はメーカーや流通など業種も多様だが、主に電気を消費する需要側の集まり。企業として温暖化防止にどう貢献できるか。自社だけで取り組む時代ではなくなっている。みんなで声を上げれば、再生可能エネルギーなどを取り巻く環境を変えていきやすくなる。

 温暖化防止は地方にも大きく関わる。電気で言えば今後、地域で発電して近隣で使う「地産地消」が理想だ。太陽光や水力などの再生エネを生産し、地元で使い切れない分を消費地に売るビジネスモデルが成り立つ可能性が大いにある。

 なぜなら、そういう電気を必要としている企業がたくさんあるから。新たな事業をつくるポテンシャルは地方にこそあり、そこに期待している。

 イオンは国内のグループ企業で日本全体の電力消費量の1%を使っている、つまり買っている。グループの二酸化炭素(CO2)排出は、9割が電気からだ。昨年3月、「店舗で排出するCO2等を2050年までに総量でゼロにする」などの「脱炭素ビジョン」を公表した。電気を買う側として「クリーンなエネルギーが欲しい」というメッセージを発信したかった。

 脱炭素社会の実現がJCLPの究極の目標。政府や政策への影響度を高めていきたい。目標達成は簡単ではないが、辛抱強く、粘り強く取り組んでいく。

 【略歴】2019年4月から現職。イオンでは、17年から環境・社会貢献・PR・IR担当の執行役を務める。