決壊した秋山川の堤防で進む復旧工事現場(中央左)と浸水で大量の土砂が流れ込んだ赤坂町地区(右下)=15日午後2時40分、佐野市寺中町、小型無人機から

 台風19号は県内に甚大な被害を及ぼした。2015年9月の関東・東北豪雨から4年。「数十年に1度」の豪雨は再び起き、県内に2度目の大雨特別警報が発表された。広範囲の浸水、4人の犠牲者。被害が拡大した背景を現場から探る。

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 みるみるうちに、濁流が街をのみ込だ。

 台風19号が本県に最接近した12日夜。佐野市中心部を流れる1級河川・秋山川の堤防が決壊、川の水が住宅街にあふれだした。

 決壊箇所は同市赤坂町、大橋町の2カ所。常時観測用の水位計やライブカメラの情報を基に、県は同日午後9時45分、赤坂町での決壊を発表した。

 人の胸の高さまで一気に増す水かさ。水没で電気系統に異常が生じたのか、車のクラクションが、あちこちで鳴り響いた。

 同市赤坂町、山岸盛三(やまぎしせいぞう)さん(73)は妻と自宅2階で不安な一夜を過ごした。氾濫の危険に気付いたが「道路が20~30センチ冠水し、逃げられなかった」。浸水は一時、2階に上がる階段の3段目まで迫った。一夜明け一変した街の光景を前に、思わず涙がこぼれた。

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 東日本の広範囲で猛威を振るった台風19号。被害の大きな特徴が、多発した河川の堤防決壊や氾濫だ。

 本県も県管理の河川で、決壊19カ所、堤防がある場所の水があふれる越水16カ所、堤防がない所であふれる溢水(いっすい)15カ所が判明しているが、全容はまだ分かっていない。

 秋山川のほか、栃木市の永野川(決壊)、大田原市の蛇尾川(同)、那須烏山市の荒川(越水)など被害範囲は広く、県南を中心に床上、床下浸水は15日夜の時点で8千棟(下野新聞社調べ)を超える。2015年9月の関東・東北豪雨時の5106棟を既に上回る。

 県内で決壊や氾濫が相次いだ理由は何か。宇都宮大の池田裕一(いけだひろかず)教授(河川工学)は「(18年7月の)西日本豪雨に匹敵する、非常に広範囲の降雨」を挙げる。雨雲が列をなし一定の期間・範囲にとどまる線状降水帯が影響した4年前に対し「雨の強さが同じでも今回は範囲が全く違う」と指摘し、こう続けた。「地域の例外なく、国内のどこでも水害が起き得る状況を迎えた」

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 赤坂町の決壊箇所は応急復旧工事が進められ、決壊場所には巨大な土のうが並ぶ。15日、災害緊急調査で現地を訪れた国土交通省の細井俊一(ほそいしゅんいち)災害査定官は「大量の水が、流れが変わった際に(堤防に)ぶつかったのではないか」との見方を示した。県の担当者は

「川が曲がっていて川幅も狭いため、水量が増して水があふれた」とみる。

 決壊にはいくつかの種類が知られ、秋山川の映像を確認した池田教授は、まず川の水があふれ、徐々に堤防の外側の斜面を削ったタイプと推測した。

 今回の降り始めからの総雨量(11日午前0時~13日午前2時)は佐野市葛生416・5ミリなどを記録した。県内全観測地点で平年の10月総雨量をはるかに超える豪雨がもたらした河川被害の調査、対策の検討は始まったばかりだ。