豊穂川に設置された樋門

 台風19号の影響で、栃木県小山市大行寺地区は2015年の関東・東北豪雨に続き今回も多数の浸水被害が発生した。いずれも思川の支流、豊穂川の水があふれたためだ。前回の豪雨の後、思川から豊穂川への逆流を防ぐ水門が設置され、今回初めて稼働したが被害を防ぐことができず、住民から不満の声が上がっている。豊穂川は河川改修の途上で、市は対応を急ぐ考えだ。

 「門ができたから、今回は大丈夫だと思っていたけど…」。13日午前、大行寺の自宅が床上浸水した無職男性(79)は、水浸しになったカーペットを片付けながら声を落とした。

 店内の設備が浸水し営業できなくなった居酒屋店主男性(57)は「また豊穂川があふれた。自己責任とか想定外では済まされないでしょ」と憤りを隠せない。

 思川と豊穂川に挟まれた同地区は地理的に浸水しやすい地域だった。15年の豪雨では「思川から逆流する水と、上流から流れてくる水で豊穂川があふれた」と市建設水道部は説明する。

 このうち思川からの逆流を防ぐための水門が17年3月、合流地点に設置された。県や市の職員が目視して両方の川の水位が同じ高さになった時点で閉める手順で、12日午後9時20分に閉門し、13日午前3時20分に開門した。

 その結果、逆流は止められたが、上流から来る水は行き場がなくなった。市は水門付近と上流の農業用水路で計5台の排水ポンプを稼働させたが、うち2台は閉門後に水没。市は「正常に稼働していたとしても追いつかなかっただろう。現時点でできることは全てやった」と強調する。

 市によると、大行寺地区の今回の浸水件数は床上148棟、床下114棟(16日現在)。水門がなかった17年は床上689棟、床下226棟。降雨量などが異なるため単純に比較できないが、今回は逆流が防げた分、被害が減少した可能性はある。

 豊穂川は7月、思川との合流地点から約1・2キロが1級河川に指定された。市は国の補助金を活用し、今後10年かけて川幅の拡大や堤防整備、雨水ポンプ場や調節池の整備を行う計画だ。同部の古川幸一(ふるかわこういち)部長は「さらにスピード感を持って進めていく」としている。