「何か目的がないとやっていけない」と、泥がうっすらと残る花壇にチューリップの球根を植える根津さん=11日午前、栃木市内

 台風19号の直撃から12日で1カ月。立冬も過ぎ日々寒さに向かう中、県内にはなお避難所での寝泊まりを余儀なくされたり、生活再建の見通しが立たなかったりする被災者がいる。先の見えない不安は今も続く。

■避難所で寝泊まり続く 栃木・根津初子さん(71)

 「何か目的がないとやっていけないよね」

 栃木市中心部に住む根津初子(ねづはつこ)さん(71)は11日、泥がうっすらと残る花壇にチューリップの球根を植えながら、自分に言い聞かせるようにつぶやいた。

 自宅は床上が約30センチ浸水し、畳や家具などが水没した。多くの花木を植えていた自慢の庭も、泥が20センチ以上堆積し「悔しいくらいに汚くなった」。

 大工には床板を敷く工事を依頼したが、まだ来ない。一時はショックで声が出ず、失声症のような症状も出た。今も避難所で寝泊まりする生活が続く。

 築70年。離れて暮らす子どもからは引っ越しも打診されたが、思いとどまった。「この庭を数年がかりで復活させる」。花壇に水をやりながら、そう誓った。

 同市薗部町1丁目の男性(83)宅も床上が1・2メートルほど浸水。10月12日夜は停電で腰まで水が漬かる中、水の中にもぐり、妻(79)を1・5メートルほどの高さの押し入れまで持ち上げた。自らは妻に引き上げてもらい、押し入れの上で水が引くまで過ごしたという。

 家具や洋服は全て水没。居間は床板を外し、床下の土間がむき出しになっている。現在も被害を免れた市内の子どもの家から通い、家の掃除を続ける。

 病気を患い、医者からはあまり長くないと言われている。周囲からは「また水害が来るから危ない」とよく言われるが、引っ越しは考えていない。

 「お金もないし、寝床があればいい。あと5年でいいんだ。ここが好きだから住み続けるよ」