泥に覆われた田んぼの前に立つ塩野目さん。「どうしようもないよね」と肩を落とす=13日午後、那須烏山市下境

 台風19号の本県直撃から1カ月以上がたった今も、県内の水田には大量の泥や石が残ったままの状態が続いている。農家からは「次の田植えはできるのか」と来春の作付けを不安視する声が上がっている。被害が大きかった地域では離農を考えている人もおり、台風の影響は深刻だ。

 那須烏山市下境に広がっていた田園風景は一夜にして一変した。場所によっては深さ30センチ以上の泥が田んぼを覆った。

 「どこが田んぼでどこがあぜか分からないよね」。同市の農業委員を務める下境、農業塩野目富夫(しおのめとみお)さん(71)は、変わり果てた田んぼを前につぶやいた。

 10月12日に本県を直撃した台風19号の影響で近くを流れる那珂川から大量の水があふれ、田んぼに流れ込んだ。泥も一緒に流入し、田んぼを埋め尽くした。同市下境に近接する上境の田んぼにも石が流入し、今も石が散乱している。

 泥や石が堆積した農地を復旧する場合、工事費が1カ所当たり40万円以上であれば、国の災害復旧事業の支援が受けられる。今回の台風は激甚災害に指定されたため、全体の工事費の9割以上を国が負担し、工事は地方公共団体などが担う。

 同市によると、調査を経て災害復旧事業の条件に該当すれば、泥の撤去などの工事は市が実施する予定。ただ、取りかかるのは年明けになる可能性が高い。塩野目さんは「来年の田植えに間に合うか心配。できるだけ早く撤去をしてほしい」と望む。

 懸念は農地の復旧だけではない。

 塩野目さんは「下境には台風被害に加えて後継者がいないなどの理由が重なって、離農するか悩んでいる農業者が数人いる」と打ち明けた。もし今後、実際に離農する人が出てくれば「耕作放棄地が増えてしまうのではないか」と危惧する。

 塩野目さんは自宅も床上浸水の被害を受けた。自宅の片付けなどが進む一方で「農業の再建に向けた課題は山積みだ」と不安を募らせている。