国内に30万種ある名字の由来を調べ、「日本苗字(みょうじ)大辞典」など著書が150冊に上る姓氏研究家の故丹羽基二(にわもとじ)さんは佐野市の出身。近所の「四十八願(よいなら)」さんという珍しい姓に興味を持ったのが発端という▼確かに、佐野周辺以外で耳にしたことがない。逆に、誰もが知人や友人に数人はいそうなのが佐藤(さとう)さん。国内最多で200万人といわれるこの姓を、丹羽さんは「佐野の藤原(ふじわら)氏」が由来と説いた▼藤原氏は、平安時代中期に平将門(たいらのまさかど)を討ち、佐野市の唐沢山に城を築いたとされる藤原秀郷(ふじわらのひでさと)が始祖。全国に散った子孫が、名だたる英雄だった秀郷を誇りに思い、佐藤を名乗ったと見る▼市がこれに着目した。佐野を「佐藤さんのふるさと」と認識してもらおうと、3月10日を「佐藤さんの日」と設定し、全国に発信する準備を進める▼秀郷は謎の多い人物である。ほとんど史料に登場しない。加えて、現在の唐沢山城跡は調査の結果、室町時代以降の築とされ、秀郷が生きた時代とかけ離れる。秀郷は大ムカデ退治でも有名だが、あくまでも伝説だ▼とはいえ、ここは悠久なる歴史ロマンを優先したい。国史跡に指定された城跡には、高さ8メートルの素晴らしい高石垣もある。全国の佐藤さんがこの前に立ち、自らのルーツに思いをはせてくれたら、市にとってこの上ない応援団になるだろう。