常連客を担当する土屋さん(右)。感謝を口にする客に、「こちらこそ、ありがとうの思いでいっぱい」と語る

 宇都宮市曲師町のオリオン通りにある老舗店「ヒカリ美容室」は、31日の営業を最後に店を閉じる。2代目の店主土屋恵美子(つちやえみこ)さん(84)は常連客から慕われ、60年通い続けている人も。常連客が惜しむ中、店は74年の歴史に幕を閉じる。

 ヒカリ美容室は戦後間もない1946年、土屋さんの母光(みつ)さんが開いた。土屋さんが中学生の時、光さんが他界し、店は存続の危機に直面したが、土屋さんは「母の名が付いた美容室を畳みたくない」と決意。17歳で美容師の資格を取得し、店を守った。

 「お客さんにきちんと向き合いたい」という思いから、客同士の予約がかぶらないよう、ほぼ貸し切りで対応。明るい土屋さんは「先生」と呼ばれ、慕われてきた。土屋さんは常連客を「ちゃん」付けで親しみを込めて呼び、「お客さんは友達や家族のよう」と関係を大切にしてきた。

 最近は膝を痛め、病院通いをしながら娘2人と店を続けた。新型コロナウイルスの影響で、4月下旬から一時自主休業した後も店を再開したが、土屋さんは「これ以上、体がもたないし、コロナなどいろいろ重なった。20年前に他界した夫が『もう十分やったんじゃないの』と言っている気がして」と閉店を決断した。

 閉店を知った客で、31日までの予約はいっぱい。花を持って駆け付けた客もいたという。10年以上、一緒に通う八幡台の70代夫婦は「私たちにとって収まりがいい場所。街でおしゃべりして帰れる場所でもあり、もっと続けてほしかった」と惜しむ。長女の隆代(たかよ)さんは「私でもいい、とお客さんは言ってくれたが、ここは母の店。『母がやめる時が、店を閉める時』と決めていた。母の体調に合わせてくれた常連さんに感謝しかない」と笑顔をみせた。