後輩に胸を貸す黒羽高3年の渡辺さん(中央右)と、稽古を見守る益子さん(左)。大学進学を断念し、地元就職へ進路を変えた=15日午後、黒羽高

後輩たちと練習に励む栃木商業高3年の小瀧さん(中央)。「やり残したことがある」と大学での競技続行を決めた=11日午前、栃木商業高

後輩に胸を貸す黒羽高3年の渡辺さん(中央右)と、稽古を見守る益子さん(左)。大学進学を断念し、地元就職へ進路を変えた=15日午後、黒羽高 後輩たちと練習に励む栃木商業高3年の小瀧さん(中央)。「やり残したことがある」と大学での競技続行を決めた=11日午前、栃木商業高

 新型コロナウイルスの感染拡大により、大きく揺れた昨年の高校スポーツ界。全国高校総体(インターハイ)の中止など主要大会の消失は、活躍の場を奪われた3年生の進路選択にも影響を与えた。希望していた進路とは別の道を進む選手、引退を撤回して競技続行を決めた選手も。コロナ禍で翻弄(ほんろう)されて迎える「18の春」。思い描いていた未来とは違う第一歩を踏みだそうとしている高3アスリートたちを追った。

 15日午後、黒羽高相撲場。まわし姿の渡辺賢汰(わたなべけんた)さん(17)が後輩に交じって稽古に汗を流した。「軽量級の相手になるのは自分しかいないので」とはにかむ渡辺さん。益子魁斗(ましこかいと)さん(18)も掃除の手を止め、土俵の外から後輩たちを見守った。

 県内屈指の強豪校で、角界や名門大へ進んだOBも多い。2人も当初、スポーツ推薦入試で大学進学を目指していた。全国大会で入賞し、自信をつけて大学へ-。だが、インターハイ中止で「夢が消えた」(益子さん)。コロナ禍が明るい未来図を塗りつぶした。

 昨春の休校中は稽古ができず、再開後も多くの制限がかかった。実戦の場も少なく、「進学できたとしても練習に耐えられるのか」。益子さんの不安は増幅した。大学から声が掛かっていた渡辺さんも、稽古不足で本来の相撲が取れなくなり自信を喪失。苦悩の末、2人は地元就職を決めた。

 諦めた夢は後輩に託した。「今年のインターハイはあると信じたい。自分たちの分まで勝ってほしいから」と渡辺さん。就職後も稽古場に駆けつけ、後輩をサポートする予定だ。

 コロナ禍で集大成の場を奪われ、やり残した思いが競技続行の決め手になった選手もいる。栃木商高女子ハンドボール部のGK小瀧綾乃(こたきあやの)さん(18)もその一人。「コロナがなければ辞めていた」といとおしそうにボールを見つめる。

 商業科の教師になる夢をかなえるため、競技は高校までと決めていた。「高3のインターハイで16強に」。だが望んだ最後の夏は訪れず、代替大会で優勝しても気持ちは晴れなかった。

 そこで「不完全燃焼では次へ進めない」と引退を撤回。都内の大学へ進み、体育科教諭を目指すことにした。「今までの日常は当たり前じゃない。一日一日、やりきったと思える日にしたい」。コロナ禍で得た教訓を、残りの競技人生に生かすつもりだ。