かつて暮らした場所に火が及び、物置などが焼けた現場を見つめる斎藤さん=1日午後3時40分、足利市大岩町

無事卒業式が行われた足利工業高

かつて暮らした場所に火が及び、物置などが焼けた現場を見つめる斎藤さん=1日午後3時40分、足利市大岩町 無事卒業式が行われた足利工業高

 栃木県足利市の両崖山で2月21日に発生した山林火災は1日、9日目で鎮圧宣言が出され、住民に安堵(あんど)が広がった。休校が続いていた近隣の学校も再開するなど日常を取り戻した。

 「民家の一歩手前で食い止めてもらったのが幸い」。五十部(よべ)町、無職斎藤雄一(さいとうゆういち)さん(97)は胸をなで下ろした。

 ただ、かつて自宅だった大岩町の北関東自動車道近くの土地にあった物置やバイク、農具などを焼失。8年前、84歳で他界した妻セツさんと新婚時代を過ごした土地で、庭木のモミジやクヌギなども炭と化した。「23日の昼以降ひと晩で一気に山を駆け降りた」と火勢の恐ろしさを振り返った。

 西宮町の発生場所に近く24日から休校となっていた足利市第一中は祝日や土日をはさみ1週間ぶりに授業を再開した。生徒の変わらぬ表情に塚田良雄(つかだよしお)校長(56)は「心から安堵している」。一方でヘリコプターの音や目の前に火が迫る様子に恐怖で眠れなかった生徒もいるという。休校中は担任が毎朝連絡したほか、家庭訪問などを行ったといい「引き続きケアに努め、落ち着いて授業が受けられる環境を整えたい」(塚田校長)。

 一時、休校や下校を早めた足利工業高では1日、予定通り卒業式が行われた。式典では、時折ヘリコプターの音や消防サイレンが行き交う中、189人が無事、卒業証書を手にした。答辞を述べた機械科桜井捺貴(さくらいなつき)さん(18)は「地域の皆さんが困っている中、やっていいのかという思いがあったが、煙のない青空で迎えられてよかった」と笑顔を見せた。

 町内の54世帯に避難勧告が出された西宮町自治会の石原栄(いしはらさかえ)会長(73)は「やっと落ち着いた日々が戻る」と目を細めた。当初、町内の本経寺境内に現場指揮本部が置かれ、役員らで炊き出しのにぎり飯を届けた。住民避難の呼び掛けや留守中の見回りなどにも奔走。「人の命も家も守れた」と胸を張る一方、「火事の影響かイノシシも降りてきている。引き続き注意を呼び掛けたい」と気を引き締めた。