石巻市出身の門間さん(中央)。サロンに集まった高齢者と交流する=2月上旬、大田原市山の手2丁目

石巻市出身の門間さん。震災がきっかけで福祉の仕事を志した=2月上旬、大田原市山の手2丁目

石巻市出身の門間さん(中央)。サロンに集まった高齢者と交流する=2月上旬、大田原市山の手2丁目 石巻市出身の門間さん。震災がきっかけで福祉の仕事を志した=2月上旬、大田原市山の手2丁目

 大田原市内で1人暮らしをする高齢女性から、食料品の買い物の依頼を受ける。女性宅で買い物リストを確認する。「じゃあ、買い物して、また来るね」。女性宅を後にし、スーパーへと向かう。

 高齢者の孤立予防に取り組む一般社団法人で働くさくら市、門間大輝(もんまだいき)さん(27)=宮城県石巻市出身。現在の仕事を志したのは、東日本大震災がきっかけだった。

 2011年3月11日。高校2年生だった門間さんは学校の教室で被災した。津波の影響で自宅へは戻れず、石巻市内の避難所に身を寄せた。そこで、津波を逃れてきた高齢者の着替えを手伝ったり、泣きじゃくる中学生の女の子に「大丈夫ですか」と声を掛けたり。自分にできることを懸命にやった。

 「あんた、こういう仕事向いてるね」

 居合わせた「おばちゃん」にこう言葉を掛けられた。今も鮮明に覚えているその一言。「自分の中ですごいぐっとくるものがあった」と当時を懐かしく振り返る。

 誰かに寄り添うこと、心のケアをすること-。「そういう仕事っていいな」と意識するようになった。人をサポートする福祉分野の仕事について調べた。「自分に合っているんじゃないかな」。将来の道筋が見えた気がした。

 12年4月、大田原市の国際医療福祉大へ進学。社会福祉を専門に学んだ。若者と高齢者の世代間交流に取り組むボランティア活動にも参加した。社会を良くしようと動く大人たちとの出会いに恵まれた。「ここでできた人とのつながりを大切にしていきたい」と大学卒業後も栃木に残った。

 現在は同法人で高齢者の生活支援などに携わるほか、まちづくりに関わる宇都宮市のNPO法人でも働く。

 栃木で暮らす中で、ずっと心にあるのは「地元に関われていない」という思い。年末年始など、石巻市へ帰省するたびに復興途上の姿を目にする。「東日本大震災復興事業」などと書かれたトラックが行き交い、津波にのまれた家の基礎部分は残ったまま。「10年たっても震災は終わらないんだという気持ちが強いですね」。震災の爪痕が残る古里へ思いをはせる。

 この10年間は「あっという間だった」。震災を経験し「こういう仕事をしたい」と思ったその延長線上に今、立っている。「この道に進んで良かった」。はっきりとそう話す表情には充実感がにじむ。そしていつか…。「将来、自分の仕事を生かして地元に貢献したい」