獨協医大でカードを前に意見交換する実習参加者と山口主任教授(左から2人目)

 【壬生】「自分の命があと半年から1年だと言われたら、大切にしたいことは何か」-。医師を目指す学生が患者や家族の希望に寄り添う意思決定の在り方をゲームで学ぶユニークな取り組みが、北小林の獨協医大で行われている。医療者の価値観を押し付けるのではなく、患者自身の思いを尊重できる医師の育成を目指している。

 「お金の問題を整理する」「尊厳が保たれる」などと書かれたカードから「大切にしたいこと」を選ぶ。学生は6月の実習で頭を悩ませた。取り組んだのは「もしも」の時のことを考え話す「もしバナゲーム」だ。

 千葉県にある亀田総合病院の医師が開発した。トランプサイズの35枚のカードには、死の間際まで大切にしたいと考えられるさまざまな内容が書かれている。「治療が難しい病気で半年から1年の命」という設定で、自らが重視する価値観を考え、配られた手札と山札を交換。最後に残ったカードをなぜ選んだか、参加者で意見を交わす。

 同大では約1年前、麻酔科学講座の山口重樹(やまぐちしげき)主任教授が5、6年の緩和ケア実習の一環で導入した。人生の最期をどう迎えたいか、事前に家族や医療者らで話し合う「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」に親しむ目的。山口主任教授は「患者は受け身になりがちで、医師が押し付ける医療になる可能性がある。さまざまな意見があることを学ぶきっかけになればいい」と説明する。

 実習に参加した学生は選んだカードを基に「尊厳とは何か」を話し合い、「自分を否定されないこと」「終末期だからといってないがしろにされないこと」などと考えを深めた。

 「尊厳は人によって違う。しっかり聞かないと、良かれと思ってやったことが時には押し付けになってしまう」。司会を務めた東北福祉大の武村尊生(たけむらたかうぶ)准教授が呼び掛けた。5年の金澤光(かなざわひかる)さん(24)は「患者の思いを理解できる医者になりたい」と話していた。