男子200メートル個人メドレー予選のレースを終え、手を振る萩野公介=東京アクアティクスセンター

 リオデジャネイロ五輪銀メダリストが、予選から全力でもがいた。久々の手応えが表情に表れる。男子200メートル個人メドレーの萩野公介(はぎのこうすけ)は復帰後の自己ベストを更新する1分57秒39。準決勝16枠に組4位タイ、全体5位で通過し「最近の僕の中ではいい泳ぎができた」と明るかった。

 「余裕な実力はない」。メダリストのプライドはとうに捨てた。「(予選の)1本で終わってしまうかもしれない」と覚悟を決め、力を振り絞った。「100パーセントで泳ぐだけ」。何度も繰り返した言葉のままの素直な泳ぎだった。

 最初のバタフライがポイントになった。合宿で平井伯昌(ひらいのりまさ)監督に指摘されたストロークの回数。通常より1かき減らした17かきで泳ぎ切り、「最後に伸ばせたのが大きかった」。

 7位で入った背泳ぎはバサロ後の浮き上がりで順位を上げ4位に。平泳ぎは好タイムだった日本選手権を上回り3位まで上げた。ゴール板をたたくと目に焼き付けるように掲示板をじっと見つめ、プールサイドでは笑顔でイギリス選手らと健闘をたたえ合った。

 高校生で出場した2012年ロンドン五輪は「若さ」、16年リオ五輪は「自信」という武器があった。スランプに苦しんだ5年間を経て今、頼るのは「ぶれない心」だ。

 「こうしてもう1本泳ぐチャンスをもらえた」。感謝の気持ちで迎える準決勝は16時間後。「タフさには自信があるので、また頑張ります」と気合を入れ直した。

 出場選手中、シーズンベストはトップ10に入っていない。ただ「五輪には魔物がいる」という言葉があるならば、その逆があってもいい。この特別な場所が、あの時の力を少しでも取り戻させてくれるのを期待している。