女子クレー・トラップ予選後半 第4ラウンドを終え笑顔を見せる中山由起枝=自衛隊朝霞訓練場

 「悔いなく引き金が引けた」。クレー射撃女子トラップの中山由起枝(なかやまゆきえ)は予選落ちでも胸を張った。「最後」と位置付けた5度目の五輪。涙を拭った後の笑顔を見て、惜しかったという感情は吹き飛んだ。

 夏季五輪の5度目出場は柔道女子の谷亮子(たにりょうこ)さんらと並んで日本人女子最多。そんな選手にしかたどり着けない境地があるのだろう。

 前日の前半3ラウンドを終え、決勝進出圏内とは5点差。かなり苦しい状況で迎えた後半最初の第4ラウンド(25発)に42歳のレジェンドの意地を見た。

 何者も寄せ付けない集中力。表情一つ変えず、無駄な動きもない。儀式のように五つの射台を回り、淡々とクレーを打ち抜いていく。会場にある音はクレーを発射する号令と、銃声、セミの鳴き声だけ。まさに魂の25分間。「満点」に何度も何度も拳を握った。

 雪辱に燃えたラウンドでもあった。クレーの放出角度、高度、飛行距離の「セット」は4位に終わった北京五輪決勝と同じ。最後の2枚の放出方向も一致した。見事撃ち抜き「13年目でようやく自分の中で消化できた」と心から喜んだ。

 無観客開催で、勇姿を見せたかった長女芽生(めい)さんの姿は会場にない。だが家族と共に戦った。大好きなネイルアートで五輪カラーに彩り「一緒に試合をしている気持ち」で、共に五輪を戦う夫や愛犬の名前を記した。一番大切な引き金を引く人さし指の爪には、まな娘の名前を入れた。

 五輪メダリストや有望な若手と同じ射団に入り「楽しくて仕方なかった」。女子種目が加わった2000年シドニー五輪で初出場し、クレー射撃界のトップを走り続けてきた。「粘り強く、しぶとく、最後まで諦めず」。集大成の舞台は自らのスタイルを体現し、全てを出し切った。