山林火災があった両崖山の山頂付近から望む足利市などの夕景。遠方に富士山も見える=12月中旬、足利市本城1丁目(20秒間露光)

 足利市の市街地と渡良瀬川、そして富士山を一望する。2月に大規模な山林火災に襲われた、両崖山の山頂付近。痛々しく焦げた木々が残る一方、焼失した見晴台休憩所が11月に市民有志の手で再建された。夕日を受けて白く輝く木製のデッキから、理不尽な災害に立ち向かう希望を感じる。出口の見えない危機と向き合い、光を探し続けた2021年が31日、幕を閉じる。

 新型コロナウイルスの猛威が続いた1年だった。栃木県内では1月と8月、感染者の急増で国の緊急事態宣言が発令された。病床が埋まり、自宅療養者が相次いだ事態は、医療体制に重い課題を突きつけた。繰り返される自粛要請は、県民の暮らしに影を落とした。

 ワクチン接種も始まった。「感染対策の切り札」と期待され、県民の約8割が2度の接種を終えた。感染や重症化の予防に一定の効果を果たしたが、ウイルスも変異という手段で立ちはだかる。簡単に収束できない現実に無力感が募った。

 閉塞(へいそく)した状況に、アスリートが一筋の光を照らした。1年の延期を経て開かれた東京五輪・パラリンピック。柔道で金メダルを獲得した下野市出身の高藤直寿(たかとうなおひさ)選手ら、栃木県ゆかりの選手の活躍に県民は沸いた。

 米大リーグの大谷翔平(おおたにしょうへい)選手は、投打の「二刀流」の活躍でア・リーグ最優秀選手(MVP)に選出された。ゴルフの松山英樹(まつやまひでき)選手は日本勢で初めてマスターズ・トーナメントを制した。「スポーツの力」を改めてかみ締めた1年だった。

 五輪の余韻が残る9月、菅義偉(すがよしひで)前首相の突然の退陣表明は県民に衝撃を与えた。新たに発足した岸田文雄(きしだふみお)政権で、4年ぶりに行われた衆院選。栃木県は1~5区で自民党の候補者が比例復活も含めて全員当選し、立憲民主党からも2区に加え4区で新たに国会議員が生まれた。有権者が与野党双方に託した期待にどう応えるか、論戦を注視したい。

 東日本大震災の発生から10年が過ぎた。死者・行方不明者が27人に上る静岡県熱海市の土石流など、各地で災害は続いた。米プリンストン大の真鍋淑郎(まなべしゅくろう)さんは、地球温暖化予測の研究でノーベル物理学賞を受賞。猛威を振るう気候変動への対策の加速は急務だ。

 新しい1年が始まる。さまざまな危機と対峙(たいじ)する中で、分断が深まるかもしれない。誰もが自らの個性や価値観を大切にできる、希望を持てる社会の実現へ。皆で前へ進む年であってほしい。