太平洋戦争末期の沖縄県で県民の命を守ろうと奮励した知事島田叡(しまだあきら)と、警察部長荒井退造(あらいたいぞう)(宇都宮市出身)らの姿を通して、命や平和の尊さを描く映画「島守の塔」(五十嵐匠(いがらししょう)監督)の製作委員会は26日、7月22日に東京都内で公開すると発表した。本県では8月5日から宇都宮市などの映画館4カ所で上映する。

 7月22日にシネスイッチ銀座(東京都中央区)で封切りし、8月5日からは栃木、島田の古里兵庫、2人が身を削った沖縄の3県で同時公開する。その後、順次全国の映画館へと広げる。

 本県では宇都宮ヒカリ座(宇都宮市江野町)、MOVIX宇都宮(宇都宮市インターパーク6丁目)、小山シネマロブレ(小山市中央町3丁目)、フォーラム那須塩原(那須塩原市豊浦)で鑑賞できる。

 俳優陣は、主演として島田を萩原聖人(はぎわらまさと)さん、荒井を村上淳(むらかみじゅん)さんが演じている。島田のそばで仕える県職員比嘉凜(ひがりん)役を吉岡里帆(よしおかりほ)さん、現代の凜役を、香川京子(かがわきょうこ)さんが務めている。

 五十嵐監督は当時の沖縄と現在のウクライナを重ね「歴史に何一つ学んでいない人間の愚かしさと悲しさを思う」としている。

 撮影は2020年3月に始まったが、まもなく新型コロナウイルス禍で1年8カ月に及ぶ休止を余儀なくされた。作品に期待する全国のサポーターからの支援寄付を受け、21年11月に本県で撮影を再開し、コロナ禍を乗り越えた作品として、今年3月に完成を迎えた。宇都宮、栃木など県内5市町も撮影の舞台となっている。サポーターからの寄付は3千件を超えている。

 製作委員会は、栃木、兵庫、沖縄3県の地方紙である下野新聞社と神戸新聞社、琉球新報社、沖縄タイムス社などで構成されている。

 主演俳優2人と監督のコメントは次の通り。

 ◇萩原聖人さん(島田叡役)

 

 東日本大震災を知らない世代がいるように、時間の流れは速く、次の時代を作っていきます。この作品で語られていることは僕自身も詳しくは知らない事が多かったです。どんなに時間が早く過ぎても決して忘れてはならない事が描かれた映画です。まさに今、そんな時代だからこそ、たくさんの方に見ていただけたらと心から思っています。

 ◇村上淳さん(荒井退造役)

 

 この作品が伝えるべき“核”となるメッセージはスクリーンにあります。この作品に参加できたことを誇りに思います。五十嵐監督の優しい執念のようなものに守られた作品だなと思います。画に写るすべての役者たちの“顔”がいい。フレームの外の気配。この作品がどうみなさまに写るのか。どうぞよろしくお願いいたします。

 ◇五十嵐匠監督

 映画「島守の塔」を監督するため、3年間沖縄に通い、数多くのガマにも入りました。ガマの暗闇の中、沖縄戦で何カ月もそこで息をこらしていた多くの沖縄の人々のことを思いました。

 ひめゆり平和祈念資料館では修学旅行の女子生徒がひめゆり学徒隊の日記を読み、ボロボロ涙を流していました。日本兵とともに南へ下った何万人もの人々が摩文仁で命を落とし、その道々に今でもその人々が立っているような錯覚を覚えました。沖縄では「戦争が終わっていない」と思いました。

 現在、ウクライナで戦争が起こっていますが、製鉄所の地下で息をひそめるウクライナの人々がガマの中の沖縄の人々とダブってしまいます。過去の歴史に何一つ学んでいない人間の愚かしさと悲しさを思います。

 映画「島守の塔」は、コロナ禍のため、撮影途中で中止になり、完成が危ぶまれました。しかし、1年8カ月の延期の末、この作品を「必ず、世に出す」という、スタッフ・キャスト、そして製作委員会やサポーターの皆さんの強い意志が映画「島守の塔」を生み落としました。奇跡のような映画だと思っています。