東京都内の「とちぎ材」を紹介してきた今企画。「鎌倉に大谷石の街並みがある」との情報が寄せられた。最終回はNHK大河ドラマに沸く神奈川県鎌倉市を訪れた。

 向かった先は鎌倉駅から電車とモノレールで約20分ほどの西鎌倉。「大変な量の大谷石でしょう」と案内してくれたのは、東京県人会会長で西鎌倉在住の大島栄寿(おおしまえいじゅ)さん(86)=旧塩原町出身。確かに住宅街の至る所、道路の両脇に、大谷石が擁壁として使用されている。

西鎌倉の住宅街では至る所で大谷石の擁壁を目にする。東京県人会会長の大島さんの自宅でも利用されている

 西鎌倉は西武鉄道が昭和40年代に開発した大規模住宅団地。当時、首都近郊では大量の建材が必要とされた。コンクリートが普及する前で、安価で輸送しやすい大谷石が出荷されたようだ。ちょうど大谷石の最盛期に当たる。

 高級住宅街に残る約50年前の大谷石。濃い茶やグレー、黄に変色している部分もあるが、特有のミソはすぐ分かる。「郷土が思い出される」。大島さんが25年前に都内から移る際、居住地選びの決め手になったのは大谷石だったという。

 せっかく鎌倉まで足を延ばしたからには、鶴岡八幡宮も参拝したい。境内に立地する「鎌倉文華館  鶴岡ミュージアム」も、大谷石スポットだからだ。

 建物は、パリ万博日本館を設計した建築家の坂倉準三(さかくらじゅんぞう)が手掛け、1951年に神奈川県近代美術館としてオープン。2019年6月、現在のミュージアムに生まれ変わった。現在は2階が「鎌倉殿の13人 大河ドラマ館」として開館している。

「鎌倉文華館 鶴岡ミュージアム」の1階は大谷石を外壁に使用している

 大谷石は1階の外壁、中庭の壁などに施されている。古都の杜(もり)に合う、美しく上質な風合いで、国指定重要文化財の建物を支えている。

 石材を供給した大谷石産業(宇都宮市)広報部長の飯村淳(いいむらじゅん)さん(60)によると改修の際、解体した石に耐震補強を行ったほか、新たに掘り出した石を採用。「風化したように表面を仕上げるのに苦労した」と振り返る。

 全国には大谷石を用いた歴史的建造物が多いものの、解体されたり別の建材に変えられたりするケースもあるという。飯村さんは「引き続き維持しながら使ってもらいたい」と望む。

 大谷石や芦野石、益子焼、天明鋳物、竹、技…。ハードからソフトまで東京圏には、多彩な「とちぎ材」が息づく。今後も新たな舞台での出合いが楽しみだ。(終わり)

◆大河ドラマ館 鶴岡八幡宮境内にある「鎌倉文華館  鶴岡ミュージアム」2階で、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を紹介している。内容は衣装小道具の展示や各種映像など。2023年1月9日まで。午前9時半~午後5時。入場料は大人千円、小・中学生500円。