ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から、4カ月が過ぎた。鳴り響く銃声、市民への殺りく、転がる遺体-。凄惨(せいさん)な現実が日々伝えられる。
「まさか」。小山市、木村和子(きむらかずこ)さん(78)は、その思いが拭えない。「生きているうちに、また戦争なんて…」
1歳の時、広島市内で被爆した。音楽教師だった父親は実家の跡取りが戦死し、継ぐことになった。母親と離縁せざるを得なかった。母、姉、自分の3人暮らし。幼い頃から、よその子守を引き受け、働いた。貧乏だからと、いじめられもした。
「戦争はきれいごとじゃない」。今も「戦争のせい」の苦しい生活の記憶が残る。それだけに平和への願いは切なるものだ。
武力行使せず、ウクライナを支援する政府の姿勢に異論はない。ただ、それによる近隣諸国との関係が気がかりだ。
ロシアは日本の制裁に反発し、北方領土問題を含む日本との平和条約締結交渉を中断した。尖閣諸島などを巡る中国との緊張も予断を許さない。日常が壊される事態を「あすはわが身」と思うようになった。
願いはただ、孫子が平和に生きること。「国会議員にはジェスチャーだけで終わらないでほしい」と実効性のある施策を求める。
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ウクライナ侵攻を受けて、主な争点に浮上した安全保障政策。「社会の関心が高まっていることは肯定できる」。宇都宮大国際学部4年鈴木(すずき)ひとみさん(21)は、そう受け止める。
大学でさまざまな世界の紛争、人権侵害を学んできた。「専守防衛」を掲げてきた日本。「有事の際にどうするのか、しっかり考える時が訪れた」と捉える。
参院選での各党の主張は、防衛費増強や防衛力強化を掲げる内容が目立つ。鈴木さんは「日本と欧米では環境が違う。増額ありきではなく、中身を精査してほしい」と注文を付けた。
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6月中旬、那須塩原市太夫塚1丁目の西那須野公民館で開かれた県北地区憲法講演会。講師の服部有(はっとりゆう)弁護士は「戦争放棄そのものが絶対に嫌という人はいないだろう」と指摘した。
その上で、安全保障への考え方の違いなどから、意見が分かれる9条への自衛隊の明記に関して、賛成・反対意見を解説した。
各党派が政策を競う参院選は、平和を守るための議論を深める機会となる。