パートナーシップ宣誓の書類を前に愛犬のココと触れ合う隆宏さん。「同性婚を認めてほしい」と訴える=6月下旬、鹿沼市

 左手の薬指に指輪が光る。鹿沼市、障害者施設に勤務する隆宏(たかひろ)さん(34)は2020年6月、男性と“結婚”した。性的少数者(LGBT)のカップルを結婚相当の関係と公認する市の「パートナーシップ宣誓制度」で第1号となった。

 新築のマイホームで夫と愛犬と暮らす。温かな家庭を築くという夢がかない、日々幸せを感じている。しかし、これまでの人生は苦難の連続だった。

 沖縄県宮古島市出身。幼少期に児童養護施設へ預けられた。両親の記憶はない。小中学生のころ、兄のように慕っていた同じ施設の先輩に恋をした。

 渡せずにいたラブレター。部屋に隠していたが、掃除の時間に同室の友人が見つけ、職員に告げ口した。「お前はアブノーマルだ」。職員は言い放ち、心療内科へ連れて行かれた。傷つき、心に壁を作った。

 高校を卒業してすぐ、福岡市内で性的少数者が集う場を訪れ、驚いた。男性同士で付き合い、手をつないでも誰も「気持ち悪い」と言わない。「自分を偽らずに生きる」と決めた。

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 生きづらさを軽減させるため、県内でパートナーシップ宣誓制度の導入が広がる。19年の鹿沼市を皮切りに栃木市、日光市、野木町が導入。9月に県と佐野市が予定し、小山市は本年度中の実施を目指す。6月上旬までに8組が宣誓した。

 参院選で各党は性的少数者への差別解消に向けた立法措置などを公約に挙げる。一方、同性婚の法制化には賛否がある。合憲と違憲-。同性婚を認めていない民法などの規定が憲法違反かどうかを争った訴訟では、司法判断も割れた。

 「好きになった人が同性だっただけ。同性婚を認めてほしい」。隆宏さんは訴える。宣誓制度は精神的な支えとなったが、民法上の婚姻とは異なる。法的な効力はなく、相続や税の控除などの権利はない。だからこそ切に願う。「家族としての法的な証がほしい」

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 県外の大学院に通う栃木市出身のみおさん(24)=仮名=は男性、女性と心の性別が移り変わる。

 「見えない存在」。自分たちをそう感じる瞬間がある。差別や偏見の解消を国や社会に求める一方、「法律で権利を保障されないといけないほど、弱者なのか」とも考えてしまう。

 「一人の人間として向き合ってほしい」。望むのはごく当たり前のことだ。多様性を認め合う共生社会の実現に向け、1票を託す先を見極めようとしている。(終わり) 

 ミニ解説  「多様性と調和」を掲げた昨夏の東京五輪・パラリンピックを契機に、共生社会実現への機運が高まっている。性的少数者は人口の3~10%との調査結果もある。世界では約30の国と地域で同性婚が認められている。自民党は性的少数者への理解促進を掲げるものの、同性婚には言及しておらず慎重姿勢を示す。一方、野党の大半は賛成または検討を進める方針を公約に盛り込む。