至宝日光杉並木、400年の時刻み次世代へ 成り立ちや現状、レンズを通して世界に誇る財産を見つめる
歴史編 プロローグ
空高く真っすぐに伸びる古木が連なる。太く息づく幹、かすかに揺れる枝葉の音-。荘厳な雰囲気が漂う日光杉並木街道は、「世界一長い並木道」と称される。江戸期の名残を今に伝えるだけでなく、県民や旅人を導く並木道として400年の時を刻み続けている。
日光杉並木の誕生は、江戸時代初期にさかのぼる。日光東照宮の造営に合わせ、徳川家家臣の松平正綱(まつだいらまさつな)・正信(まさのぶ)父子が1625年から20年以上の歳月をかけて、約5万本の杉を植栽したとされる。日光街道、日光例幣使街道、会津西街道の3街道で構成する。
全長37キロに及ぶ杉並木街道は国内で唯一、国の特別史跡と特別天然記念物の二重指定を受けている。昨年は植樹開始から400年という大きな節目を迎えた。「一歩足を踏み入れると、身も心も清められるような気分になる。この至福の時間を多くの人に体感してほしい」。所有する日光東照宮の稲葉久雄(いなばひさお)宮司(85)は、杉並木の魅力をこう形容する。
しかし、その足元は揺らいでいる。車両の排ガスや開発、老齢化の影響で、1961年に約1万6500本あった杉は2025年3月末には1万2042本にまで減少。気候変動に直面する今も、毎年10本程度が姿を消している。
杉並木を守る営みは、江戸時代から連綿と続く。1977年には県が保存管理計画を策定し、樹勢回復やバイパス整備などを本格化。東照宮や日光市、ボランティアなども連携し、保護活動に努めている。
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下野新聞社写真映像部は今回から1年間にわたり、杉並木の現状を大型写真で紡ぐ企画を展開する。成り立ち、幾度となく訪れた危機、暮らしに溶け込む杉材の文化…。レンズを通して世界に誇る貴重な財産を見つめ、次代にどう引き継いでいくか読者とともに考えたい。
【街道こぼれ話】寄進碑 「起点」と「終点」に建立
3街道の起点と終点に杉並木寄進碑が4基ある。植樹した松平正綱(まつだいらまさつな)の次男正信(まさのぶ)が亡父の偉業を後世に伝えようと建立。石碑には並木を日光東照宮に「謹んで寄進する」と記され、碑文は儒学者林羅山(はやしらざん)が作成した。
終点に当たる日光市山内の神橋近くにある「親碑」は高さ2・8メートルで最大。残る3基は「境石(さかいいし)」と呼ばれ、例幣使街道(同市小倉)、日光街道(同市大沢)、会津西街道(同市大桑)の各起点に日光神領の始まりとして建てられた。
建立は1648年。並木同様、街道の移ろいを見つめ続けている。国特別史跡。

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