
渡辺直明・文 荒井修・写真
チーム全員で新たな目標設定を
―新型コロナウイルスの感染拡大は、自転車競技の世界にもツール・ド・とちぎの中止など大きな影響をもたらしています。
ツール・ド・とちぎは今年が最後の大会であり、国内では珍しいラインレースでもありますからなくなったのは非常に残念です。選手は照準を合わせたレースに向かって練習メニューを組み立てていくので、レースがなくなってしまうと、どこにピークをもっていくか、どういう流れでやっていくのかといったスケジュールを組むことができなくなります。そういう意味では、現状での練習の再スケジューリングは非常に難しいですね。僕も目標のレースに向けて練習している毎日なので、それがなくなってしまっている今は、気持ちの持っていきどころのない状況です。とはいえ僕らが何かをできるわけではないので、静かに待つしかありません。
UCI(国際自転車競技連合)レースなどの大きなレースは中止になっていますが、Jプロツアー(JPT)は今季もやっていくと思いますし、選手にはレースを走りたいという強い気持ちがありますから、チームのみんなで新たな目標をつくっていくべき段階なのかもしれません。
鹿沼市出身の小野寺はブリッツェンの育成チーム「ブラウブリッツェン」、那須ブラーゼンを経て2016年にブリッツェンに加入。この年、JPT奈良クリテリウムでプロ初勝利を飾ると、翌17年にはアジア選手権大会U23(23歳以下)男子個人タイムトライアルで優勝、JPTでは大田原クリテリウムとおおいたいこいの道クリテリウムを制した。18年には、アジア選手権大会男子エリートのチームタイムトライアルに日本代表チームの一員として出場し、金メダルを獲得。さらに、JPTの宇都宮クリテリウムで優勝、大田原クリテリウムでは連覇を果たし、4年ぶり3度目となるチーム総合優勝に大きく貢献した。昨季もJPT宇都宮クリテリウムで連覇を果たしており、チームやファンの期待がかかるレースを着実にものにする勝負強さが光っている。
着実な成長ステップ踏めている

―ブリッツェン加入後、着実に勝利を積み重ねています。ご自分で振り返って手応えはいかがですか。
このチームに入って今年で5年目ですが、今のところは毎年着実に成長ステップを踏めていると感じています。活躍できる場面も増えていますし、チームから任される仕事の重さも増してきていると感じています。
―実力と人気を備えたブリッツェンの「顔」と呼べる存在ですね。
自分自身、ブリッツェン色に染まってきたなと感じています(笑)。このチームは地域密着型チームであり、それが日本で一番根付いたチームだと思っています。地元レースやファンイベントではファンの方々から親しみを込めて名前を呼んでいただくことが多くて、そんな時は「愛されているな」と強く感じますね。
2020年シーズンのブリッツェンは、昨季のメンバー8人から過去最多となる10人体制となった。昨季のJPTでチーム最多の3勝を挙げた岡篤志がフランスのプロコンチネンタルチーム「デルコ・マルセイユ・プロヴァンス」に移籍し、新戦力として昨季で解散したNIPPO・ヴィーニファンティーニ・ファイザネ(イタリア)に所属していた西村大輝、4年ぶりのチーム復帰となった大久保陣、那須ブラーゼンから移籍した中村魁斗の3人が加わった。
―チームの一部メンバーが代わり、10人体制に変わりました。
10人体制は心強いですね。レースでケガや病気だったりコンディションが悪化した選手が無理して出場せざるを得なかったり、欠員となる可能性が少なくなりますから。昨年は5人で戦わなくてはならなかったレースもありましたので、そうした状況を回避しやすくなるというのはチームとしての利点だと思います。ただ、選手の立場からすれば、出場枠をめぐって競争が生まれることになります。選手によって得意不得意がありますから組み合わせによって良いチーム編成ができるんですけど、出たいレースにセレクションされるためにはより一層の努力が必要になります。でも、そうしたチーム内競争が激しくなることでチームのステップアップの良いきっかけになると思っています。
(この記事はSPRIDE[スプライド] vol.36に掲載)