アスポリポーターが気になる仕事を体験し、その内容や魅力などを紹介するシリーズ企画「お仕事体験」。企画最終回の第7弾は、動物たちが快適に暮らせるよう飼育環境を整備し、さまざまな作業をする「動物園の飼育員」です。餌や水の補給、寝室の掃除、健康状態のチェックなど動物の体調に合わせ臨機応変に対応する飼育員の仕事の一部を、リポーターtが宇都宮市の「宇都宮動物園」で体験してきました。

見て 触れて 感じて
楽しく学べる動物園

「宇都宮動物園」で体験

 

先月、登録博物館に

「宇都宮動物園」とは

 77種、約330点の動物たちを飼育。「楽しく学ぶ」をコンセプトに、自然の中で動物と近い距離で触れ合えます。遊園地も併設され、さまざまな年代に親しまれています。
 図鑑だけでは分からない動物の大きさ、におい、温かさなどを実際に見て触って感じ、情操教育の場にもなっています。1月末には博物館の登録認定を受け、同動物園園長の荒井賢治さん(61)は「レジャー施設から一歩進み、学ぶことをより大切にし、楽しみながら、皆さまに動物に興味を持ってもらい、動物を知ってもらえるようにしていきたい。引き続き、企画展など教育的普及活動を充実させていきたい」と話します。

飼育員に聞く
動物たちの観察ポイントも紹介
…2面

 

 

 

 

 

 

 取材依頼時に、園長の荒井さんから「せっかくなので、いくつかの種類の動物飼育体験をしてもらおうと思います」と伝えられ、その中に「猛獣」の文字が。猛獣ってライオンかな、タイガーかな…とドキドキしながら2月上旬、「宇都宮動物園」へ。荒井さんから「頑張ってください」と声を掛けてもらい、お仕事体験がスタートしました。

健康と快適な住空間を
とにかく掃除 給餌、温度管理も

 飼育体験 

ワラビー● ● ●
 最初はワラビー。担当の中里江利香さん(25)とともに、牧草と掃除道具を持ってワラビー舎へ。まずはワラビーの状態を確認します。掃き掃除をし、パッドを洗い、バケツの水を替え、一日中食べられるように牧草を設置します。ワラビーは触れ合いができるのが魅力で、人に慣れているマックスくんの尻尾を触らせてもらいました。しっかりした感触でした。

 

キリン● ● ●
 続いてはキリン。担当の別所麻由子さん(33)から説明を受けながらスタート。別所さんは獣医師でもあります。今の時季、朝はキリン舎の窓を開け、放飼場との温度差をなくしてからキリンを外に出します。次に寝室を掃除。ふんと布団にしている牧草を集め、スコップの使い方を教わりながら寝室をきれいにします。その後、牧草と水を準備し朝ご飯。夕方までに牧草を敷き直して寝室の準備をします。

 

カバ● ● ●
 続いてはカバ舎へ。担当の加藤翔平さん(34)も獣医師。カバの状態を観察し、ご飯の準備、寝室の掃除をしていきます。ほか週2回、外のプールの掃除をするとのこと。私は寝室の掃除を体験。水を抜き、ふんを集めたあと、デッキブラシで汚れを落とし水で流します。「ブラシは面で使うようにするといい」とアドバイスをもらい、気をつけながら汚れを落としました。最後に、カバのハナちゃんの顎を触らせてもらい感激。弾力があって、想像していたより柔らかく感じました。

 
「かわいい!」。近くで見られて感激
「かわいい!」。近くで見られて感激

ライオン● ● ●
 次は猛獣です。ライオン担当の久岡雄大さん(25)の後に続き新ライオン舎へ。猛獣の飼育は二重扉が基本。どの扉も二重扉で、小窓があり、確認してから作業に入ります。間接飼育といい、同じ空間で直接飼育はしません。放飼場にいるのを確認し、寝室の掃除へ。水で軽く汚れを落とし、デッキブラシで本格的にきれいに。最後に水で流し、排水口にたまった毛を取り除きます。ご飯は一日一回夕方。週1日、胃腸を休めるために絶食するとのこと。最後に寒い時季に夜間使用するストーブに灯油を入れて終了です。

 
4月に9歳になるホワイトライオンのステルクくん。遊ぶのが大好き
4月に9歳になるホワイトライオンのステルクくん。遊ぶのが大好き

ウマ● ● ●
 最後はウマ。担当の大橋千香さん(29)と一緒に寝室の掃除をスタート。ウマの様子を見て放飼場に出し、寝室を掃除するのが基本です。水で軽く汚れを流し、デッキブラシの面を使って力を平等に入れ本格的に汚れを落とします。大橋さんに「きれいになった」と合格をもらい、飼育体験が終了しました。

 

  ●  ● 

 「飼育はずっと掃除です」と飼育員の皆さん。ご飯の準備やその他の作業もたくさんありますが、基本はずっと掃除。皆さんは慣れている上、それぞれ担当動物を複数持っているので、手際よく短時間で掃除していました。そして合間には園内でガイドも。本当に体が基本、健康第一だと思いました。動物たちに「普段の寝床と違う」と思われないように心を込め一生懸命掃除をし、貴重な体験は終了しました。


いつもと

ワラビー舎の掃除
ワラビー舎の掃除

寝床が違うと

キリン舎の掃除
キリン舎の掃除

思われないように

カバの寝室の掃除
カバの寝室の掃除

心を込めて…

ライオンの寝室の掃除
ライオンの寝室の掃除

 

頑張りました!

ウマの寝室の掃除
ウマの寝室の掃除

 

 

 

 

 

 

 

愛情かけ飼育し
来園者を迎える

 Q&A 荒井園長にインタビュー 

「教育的普及活動を充実させていきたい」と話す園長・荒井さん
「教育的普及活動を充実させていきたい」と話す園長・荒井さん

動物も人も幸せな環境整備

 園長に就任したきっかけを教えてください。
 もともと都内の証券会社で働いていました。父が体調を崩したため、跡を継ぎ2008年に園長になりました。
 この仕事のやりがいを教えてください。
 私には担当する動物がいません。もちろん動物に関わり、お世話や雑用もしますが、園全体を見て経営のことを考えます。イベント企画で多くの集客ができたときが、やりがいを感じます。先月、登録博物館の認定を受け、私自身も学芸員の資格を取りました。職員とともにレベルアップし、教育的普及活動を充実させていきたいです。
 飼育員になるには。どんな人が向いていますか。
 一般的には専門学校へ進み、その後就職です。宇都宮動物園の場合は高校生以上なら応募可能です。適しているのは第一に動物が好きであること。そして一般常識がある人、社会人として組織になじめる人、元気な人です。また飼育だけではなく、来園者への接客もあるので、対人関係もうまくできる人がいいと思います。
 園長としてうれしいこと、大変なことは。
 企画で多くのお客さんに来てもらえたときや、動物の出産が無事に成功したときです。大変なことは、休みがないことですかね。また動物は生き物なので健康状態が変わることがあります。長く飼育している動物が亡くなったときは、悲しく別れがつらかったです。
 宇都宮動物園における今後の夢や目標を教えてください。
 昨年の入場者数は22万人。年間入場者25万人を通過点にし、50万人を目指しています。動物園、博物館、遊園地として企画を立て、来園者の皆さんに楽しんでもらえるようよう職員のクオリティーも高めたい。そして動物たちが心身ともに幸せに過ごせるよう、飼育環境をより整えていきたいです。

 


新入りの希少種クロヒョウも注目!

 園長からメッセージ 

 慣れないながらも動物のふんを取ったり、力を入れてデッキブラシで寝室を掃除したりしていて、一生懸命頑張っているのが伝わってきました。
 宇都宮動物園は、昔ながらの動物園からいろいろと変わりつつあります。その変化を、遊びに来て動物のさまざまなところを近くで見て、感じて、楽しみながら学んでもらいたいです。注目は、昨年12月に仲間入りした希少種クロヒョウのソルくん。ぜひ見に来てください。

 体験した感想 

 取材を依頼したとき、園長に「飼育員の仕事は地味です。動物との触れ合いはないですよ」と言われました。実際に体験させてもらい、なるほどと実感。ひたすら清掃、清掃。普段使っていない体の部分が筋肉痛に。飼育員の皆さんは、本当に動物が好きで愛情をかけて飼育されていると思いました。改めて尊敬です。そして、さまざまなイベントを企画し、宇都宮動物園に来て楽しんでほしいという思いが伝わってきました。どの動物も本当にかわいくて目がきれい。特にホワイトライオンのステルクくんが、飼育員の久岡さんを見つめる目が印象的でした。

飼育員・久岡さんを、じっと見つめるステルクくん。とてもかわいくて美しい目です
飼育員・久岡さんを、じっと見つめるステルクくん。とてもかわいくて美しい目です