同じ夢を追い続ける兄弟は世界中に数多く存在する。しかし、2人そろって世界の極みを見据えている存在はそう多くはない。宇都宮市出身のプロフリークライマー楢﨑智亜・明智兄弟(TEAM au)は、強者ぞろいの国内において、大きな期待が寄せられている。兄・智亜は2016年のW杯ボルダリングで総合優勝、同年の世界選手権でも頂点に立ち、日本人初の2冠を達成。17年のW杯複合でも総合優勝をたすなど世界の頂点を極めた。弟の明智は17年の世界ユース選手権複合で優勝し、高校を卒業した今春から、兄と同じプロフフリークライマーとしての道を歩き始めた。そして目指すは2年後の東京五輪。出場枠は世界で20粋、日本からはわずか2、3人という狭き門が予想されるが、「どっちも出られないっていうのだけは、やめておこうよ」「そうだな」と、さらりと誓い合う。ここから先の2年間、兄弟には数々の「課題」が持ち受けているだろうが、2人そろって大観衆の前で「オンサイト」(課題を一発でクリアすること)」する日をイメージしている。

兄弟そろってKIZUNAスポーツ賞を受賞

 

――第5回の下野新聞KIZUNAスポーツ大賞では、兄弟そろって受賞(智亜:スポーツ賞、明智:ホープ賞)しました。おめでとうございます。

智亜 3年連続でノミネートされて、さらに今年は弟と一緒に受賞できてうれしいです。県内でもスポーツクライミングが認められ、浸透してきている証しだと思います。

明智 僕も選ばれてびっくりしています。やはり栃木県で注目されていることがうれしいです。

 

――昨シーズンを振り返ると、智亜選手はW杯複合種目(リード、ボルダリング、スピード)で総合優勝。明智選手も世界ユースの複合種目で優勝という結果を出しましたが、振り返っていかがですか。

智亜 五輪のルールも、複合種目に決まって、そのルールで結果を出せましたので、かなり自信になりました。

明智 正直、想像もしていませんでした。五輪が3種目の複合で行われると決まってから、手探り状態ながらも、バランス良く取り組んでいった成果が出せたと思います。

 

――既にシーズンが始まっていますが、ボルダリングジヤパンカップで智亜選手は3位、リード日本選手権では2年連続の2位、一方明智選手は日本ユース選手権リード競技大会で優勝しました。出だしはどのような感触ですか。

智亜 いい感じです。去年よりも練習できています。それにいま、登り方の意識・スタイルを変えているんです。W杯が始まってしまうと、新しいスタイルを試すことも難しくなってしまうので、国内大会で試してきました。感触的には良かったので、このまま体をなじませていければと思っています。

明智 僕の場合、ケガしてしまったんでトレーニングする時間もあまりありませんでした。でも逆に体の基礎作りができていると思うので良かったと思います。

 

 

――智亜選手の意識・スタイルの変化というのは、これまでのように、得意とするランジなど、アクロバティックな動きばかりでなく、より安定感のあるスタイルヘの変更という事ですか。

智亜 そうです。意識するポイントの変更です。でも、なかなかみんな気付いてくれないんですよね。僕が「変えた」って言ってるのに(笑)。

明智 去年も一時期変えていたよね。でもその時の智くん(兄・智亜)には、「らしさ」がちょっと消えちやっていたと思います。思い切った動きとか、斬新な発想がなくて、持ち味が出せなかったと思います。

智亜 そのへんが難しいところですね。安定して勝てる、成績を残せるクライマーを目指しながらも、その一方で「爪跡」を残すようなクライマーも格好いいと思う。「あいつすごかったね」「やっちやってるね」みたいな(笑)。記録には残らないけど、記憶に残るクライマーにも憧れますね。