同じ道を歩き始めた明智

――明智選手も今春、高校を卒業し2人そろってプロになりました。明智選手にも意識の変化はあるのではないですか。

 

明智 頑張らなくちゃと思っています。本当にクライミングだけの日々になるので。

智亜 言い訳できないからね。

明智 そう。プロになりたてのころの智くんは、相当厳しかったよね。

智亜 W杯で予選落ちしまくっていたんです。高校3年で、初めて出場したボルダリングのW杯では、決勝に行けたので「あ、これは行けるかな」と思ったんです。でも次のシーズンはボロボロでした。

明智 もしかして僕もそうなるかな。

智亜 いや、それはないよ。

 

――それぞれの得意な種目は。

智亜 ボルダリングじゃない?

明智 ボルダリングですね。自分の中では、ボルダリング、リード、スピードの順番です。

智亜 僕もそうです。どの選手もそうでしょうけど、やはりスピード種目は始まってから、まだ日が浅いんです。

明智 得意、不得意とかいえないレベルだし、国内では、あまり練習もできてないんです。

智亜 スピードの壁も、少しずつできているんですけど、練習できる施設は関東から遠いところばかりなんです。高さ15mの壁が必要だし、建てるとなると基礎がしっかりした場所でなければならないし、それもほとんど屋外なんです。2月には、今年行われる世界選手権の会場の下見も兼ねて、オーストリアのインスブルックで合宿してきましたが、そこは屋内にスピードの壁があって、3種目まんべんなく練習ができる、恵まれた施設でした。結局ボルダリングのトレーニングが重点的になりましたけど、ボルダリングの苦手な動きを突き詰めたら、リードの動きにもつながり、新しい意識・スタイルにも生かせたと思っています。

 

――国内のスピード種目のランキング(2018年3月30日時点)では、智亜選手が1位(7・16秒)、明智選手が2位(7・37秒)です。「向いているかもしれない」と思える瞬間はどんな時ですか。

智亜 やっていて楽しいと感じられる時です。やはり「スピードは嫌だ」という選手も多いんですよ。そういう中、僕らは楽しくできているし、登り方を考えている時間もワクワクしますね。

明智 向いている気はするよね。「今度、こうしてみたい」とか、「こういうムーブで行きたいな」というのが考えられるんです。

智亜 嫌いなことは、やっぱり考えるのも嫌だもんな(笑)。

 

――それぞれの存在についてどう思いますか。

智亜 明智は才能あるし、しっかり努力も積んでいるライバルとして怖い存在です。でもそれが僕のモチベーションにもなります。一緒に登っていても楽しいし、お互いアドバイスもできる。はっきり言ってくれるのが明智です。目に見えて体格が違う上に、明智は繊細な感覚を持っていると思います。けっこう神経質なんです。一つのホールドに足を置いた時、感じ取る情報量が多いというか、指先の感触とか、そういう点は明智の方が上なのかなと思います。

明智 やっぱり、智くんは去年のリザルト的にも世界チャンピオンじやないですか。だから他の選手で、智くんにモノを言える人はそんなにいないんですよ。

智亜 だから明智は、ありかたい存在です。

明智 でも智くんは、すごいです。僕も昨年、初めてW杯で連戦しましたが、結果を残すことは難しいと感じました。最初は「余裕でしょ」と思っていたんです。練習などで智くんと一緒に登っていると、かなりいい勝負ができていたし、「これはいけるかな」と思っていたんですけど、全然違いました。体の使い方がうまいんです。普通の選手は、1個のホールドを持ったら、体が安定しないと次に行きたくないものなんですが、智くんは「もう動きづらいから、行っちやえ!」みたいな(笑)。僕もそういう大雑把な感覚が欲しいですね。でもそこには、すごい体力とテクニックが必要なんです。普通、できないよね。

智亜 分からん。

明智 だから競技者として尊敬してます(笑)。兄としては、ちょっと優柔不断なところがあります。

智亜 お前もだろ(笑)。

明智 でも、まあ優しい兄です。

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