記憶の行方 語り継ぎの今 ④語り始めた92歳

空襲体験者の「けじめ」

 

 「どうか、ここで聞いた話を自分の中に留めず子、孫へと伝えてください」

 

 5月下旬、宇都宮市中央生涯学習センターの研修室。宇都宮空襲をテーマとした市民大学講座初回の冒頭、席を埋める約70人の受講生へ女性が訴えかけた。

 

 花積和子(はなづみかずこ)さん(92)=同市下川俣町。この講座の発案者だ。25年間にわたり、市民大学の企画・運営ボランティアを務める中、初めて「戦争」を扱った。

 

 自身も宇都宮空襲の被災者だが「ずっと戦争には触れたくなかったの」。災禍の記憶を胸に押し込めたまま、戦後を生きてきた。

 

宇都宮空襲の講座を企画した花積さん。自身も体験者だが当時の記憶を周囲に語ることは避けてきた=7月上旬、宇都宮市内
宇都宮空襲の講座を企画した花積さん。自身も体験者だが当時の記憶を周囲に語ることは避けてきた=7月上旬、宇都宮市内