記憶の行方 語り継ぎの今 ⑥ヒロシマ(下)

当事者なき未来見据え

 

 2023年から広島市の「被爆体験伝承者養成事業」に参加している下野市在住、通訳業大島敦子(おおしまあつこ)さん(49)は、事業の研修開始当初から気後れするような気持ちを抱いていた。

 

 同期の研修生は広島市在住者が多数を占め、被爆2世や3世も少なくない。平和活動に長年関わる人、「やっと参加できた」と積年の思いを明かす人もいた。

 広島県出身の大島さんだが、親族に被爆者はいなかった。事業への応募を思い立ったのも、つい最近のこと。周囲との「覚悟の差」のようなものを感じた。

 

廣中さんや研修生仲間の前で作成中の講話原稿を読む大島さん(右)=6月上旬、広島市内
廣中さんや研修生仲間の前で作成中の講話原稿を読む大島さん(右)=6月上旬、広島市内