棚田

 

田ごとに映す 故郷の姿

 盛夏に向け、緑深まる梅雨の時季。里山の傾斜地に広がる棚田が、美しいシーズンを迎えています。農村の美しい原風景の一つで、地域の財産でもある棚田。今回は、農林水産省が今年2月に「つなぐ棚田遺産」として選定した茂木町入郷石畑(いりごういしばたけ)と那珂川町小砂(こいさご)を中心に、県内各地の風景と保全の取り組みをご紹介します。

 

入郷石畑の棚田
(茂木町入郷)

「つなぐ棚田遺産」の美

 山あいの緑を映し、空に向かって続いていくような茂木町入郷石畑の棚田。4・9㌶に180枚の水田があります。1999(平成11)年に農林水産省の「日本の棚田百選」に認定されました。
 田が狭く、日照時間が少ないなど苦労の大きい環境の中で、天水を水源とし、農家の人たちの努力によって収穫された棚田米は格別のおいしさがあります。

 

「つなぐ棚田遺産」

 農林水産省が棚田地域振興の取り組みを積極的に評価し、地域活性化や棚田が持つ多面的機能への理解促進を図ることを目的に選定。昨年、各都道府県から推薦を募り、今年2月に開催した選定委員会において全国271地区の棚田を選定しました。県内は入郷石畑と小砂の2地区。

 

 

 

 

棚田守り 地域生き生きと

オーナー制度活動

 棚田は農村の美しい風景を作り出している一方、過疎や高齢化で耕作をやめる地域も増えています。そんな中、国の「つなぐ棚田遺産」に選定された茂木町入郷石畑と那珂川町小砂は、棚田オーナー制度による都市住民との交流やブランド米の生産などを通し、棚田の保全や地域活性化へ積極的に取り組んでいます。

 

ハッチョウトンボ観賞会
昔ながらの天日干し「おだがけ」

 

ホタル鑑賞会

「家族のように」20年超

入郷石畑の棚田・茂木

 棚田の再生と保全を目指して、2000(平成12)年8月に地元農家7人が「入郷棚田保全協議会」を結成。2002(平成14)年から県内で初めて棚田オーナー制度に取り組み、昨年で20周年を迎えました。
 現在、制度を支えるのは、会員11戸で構成する同会の16人。結成当初から町の補助を受けずに、自立した運営を続けています。昨年は県内外57組のオーナーが活動に参加し、今年は50組が田植えなどの農作業を行っています。
 オーナーと地元農家が家族のようなつながりで「一緒に棚田を守る」という意識が築いた20年。森島広市郎会長(72)は「オーナーの皆さんが素晴らしく、信頼関係ができている。ふるさとのような感じで来てくれるので、協議会のメンバーも頑張っている」と話します。
 オーナーは年会費3万円で田植えや草刈り、稲刈りなど年間を通じた農作業やホタル観賞会に参加でき、収穫米のほかに地元農産物のお土産があります。
 (問)町農林課☎0285・63・5634。

 

 

 

 

 

山間に広がる棚田
先月22日に行われた「棚田オーナークラブ」の田植え風景
県内で唯一、「日本で最も美しい村」の看板を掲げる小砂地区

地元学生らと体験交流

小砂地区・那珂川

 夏にはゲンジボタルが舞う小砂地区。NPO法人「日本で最も美しい村」連合にも県内で唯一、加盟しています。
 小砂village協議会が運営する、小砂里山農業体験「棚田オーナークラブ」は今年で9回目の開催。県内外からの棚田オーナーをはじめ、馬頭高の生徒や帝京大の学生も参加しています。田植えや稲刈りのほか、泥染めハンカチ作りや雑木林の小道を散策するフットパス、陶器市など、さまざまなイベントを通して参加者との交流を深め、地域の活性化を図っています。
 (問)同協議会事務局長・藤田さん☎0287・93・0853。

 

 

 

 

 


故郷の風景
 いつまでも…

水を張った棚田。これから晩秋にかけ表情を変えます

清流が潤す地
広がる100枚

兵庫畑の棚田(矢板市平野)

 矢板市の象徴である高原山から湧き出る清流が兵庫畑に流れ、山あいの大きな棚田を潤します。
 現在、8戸の農家が11・7㌶の棚田100枚を守り続けています。水源に最も近く、ホタルが舞いイワナがすむきれいな水で、おいしい米作りをしています。
 また「とちぎのふるさと田園風景百選」と「残したい栃木の棚田21」に選ばれており、写真愛好家が撮影に訪れます。
 (問)市観光協会☎0287・47・4252。

 

 

 

 

壮大な景色の棚田。耳をすませば水の流れる音が聞こえます(提供写真)

山あいこその味わい

日光八木澤ファーム(日光市瀬尾)

 100年以上前から代々、棚田を管理。所有している250枚の田んぼのうち、40枚が棚田です。
 特徴は「二宮金次郎」が掘ったと言われる湧水。元をたどると霧降高原から麓に降りてきています。また、1枚1枚の面積が大きく、山から見下ろす景色は圧巻です。
 同ファームは八木澤裕史さん(42)と妻の奈々子さん(37)の夫婦で管理しています。裕史さんは「山あいは気候が変わりやすく、管理に手間がかかる。その分お米がゆっくり育つのでうま味が増す」と話します。
 (問)同ファーム・日光市瀬尾2924の1、☎070・3880・2515。
 

 

 

 

 

まさに秘境の棚田です

曲線の先 恵みの景色

寺山の棚田(茂木町牧野)

 鎌倉山や大瀬観光やなのすぐそばに架かる那珂川の大瀬橋から東へ。曲がりくねった道を登った先の、緑豊かな中に棚田が広がります。面積1・4㌶に50枚の棚田があり、7戸の農家が生産・管理。県認定の「残したい栃木の棚田21」に選ばれています。
 棚田からは、周辺の山並みが楽しめます。トンビの鳴き声が響く中、のどかな景色を眺めていると、思わず深呼吸したくなります。
 (問)町農林課☎0285・63・5634。