小学校では夏休みも終わり、子どもたちが登下校する姿を見かけます。そんな姿を見るとふと思い出すことがあります。

 子どもの頃、いつも通る道沿いにあった屋根のある乾いた土の駐車場に、無数のすり鉢状のくぼみがありました。ある時、そのすり鉢状の穴に小さな虫が落ちるのを見たのです。すると、穴の中心から砂を蹴り上げ、虫を穴の深い場所へ引きずり込もうとうする何者かが現れました。それはアリジゴクでした。

アリジゴクを捕る子ども
アリジゴクを捕る子ども

 その衝撃的な獲物の捕らえ方、アリジゴクの作るきれいなすり鉢状の巣に私はとりことなりました。その日から、たくさんのアリジゴクを自宅の軒下に移住させる“アリジゴクランド計画”を始めたのです。

 まず軒下に大きめのくぼ地を掘り、サラサラの土をたくさん運び込みました。続いて公園でアリの巣を掘り返して女王アリを見つけ、エサとなるアリを巣ごと移住させようとしました。もちろん女王アリは逃げ出して、巣を作ってはくれませんでしたが…。

 いよいよアリジゴクの捕獲を始めます。最初は巣を周りの土ごと両手ですくい、地面に広げて探しました。しばらくすると動き出すので土と同色のアリジゴクでも見つけることができます。

アリジゴクを捕まえて観察してみよう
アリジゴクを捕まえて観察してみよう

 しかし、この方法は非常に効率が悪く、芸術的にきれいなすり鉢状の巣を跡形もなく壊してしまうことがとても嫌でした。その後もいくつか方法を試し続け、すり鉢状の中心に人さし指を入れて指先の感覚でアリジゴクを探し出すというすべをあみ出しました。アリジゴクに触れたらそのまま親指でつまんで持ち上げれば、すり鉢状の巣を大きく壊すこともありません。

 慣れればほんの数秒でパッパッと捕まえることができます。たくさん捕まえて気に入ったアリジゴクを持ち帰り、アリジゴクランドへの移住を進めました。

 ある日、捕まえたアリジゴクを放そうとアリジゴクランドに目を向けると…雑草の山が…。庭の草むしりをしてくれた祖母がくぼ地になっていたその場所に草を積んでしまったのです。草を退けましたが、土や草が混じり見分けることは困難でした。その日からアリジゴク熱はパッタリとさめ、ランドは閉園しました。

意外と身近な場所にアリジゴクはいる
意外と身近な場所にアリジゴクはいる

 アリジゴクは雨の当たらない乾いた土があれば、案外身近にいる生き物です。あの衝撃的な獲物の捕らえ方、きれいなすり鉢状の巣、ぜひ本物を見つけてみてください。私と同じようにとりこになるお子さんがいるかもしれませんよ。

 YouTubeにアリジゴクの捕まえ方・遊び方を紹介した動画を載せました。アリジゴクにさらに興味を持った方はぜひご覧ください。

 

イベント情報

 週末自然塾~茶臼岳に登ろう!もりもり山キャンプ~

 ・日時…23~24日

 ・参加費…2万円

 ・対象…小学1年生~中学3年生
 (イベント詳細、申し込みは那須高原自然学校ホームページより)

 里山野あそび隊「虫むし探検・秋編」

 ・日時…18日、23日 (1)午前10~11時、(2)11時30分~午後0時30分、(3)1時30分~2時30分

 ・参加費…子ども1000円、大人600円(小学3年生以下は要同伴)

 ・場所…道の駅うつのみやろまんちっく村
 (要予約、詳細は同道の駅ホームページ、じおらじおフェイスブックへ。(問)同道の駅028・615・7730)

◆遠藤隼(えんどう・じゅん)さん◆1984年、宇都宮市生まれ。大学卒業後、静岡県にある自然学校職員として子どもキャンプやエコツアーを指導。2012年8月から1年以上かけて、自転車でユーラシア大陸横断・南米縦断をした。2021年度宇都宮大大学院修了、研究テーマは「里山での幼児向け体験型環境教育の実践と評価」。現在はサシバの里自然学校校長、作新学院大女子短大部非常勤講師。