
ワクワク乗せて おもてなしの旅



アスポリポーターが気になる仕事を体験し、その仕事内容や大変さ、やりがいなどを紹介するシリーズ企画「お仕事体験」。
陸上自衛隊に続く第2弾は「SL観光アテンダント」。日光のSL観光の「おもてなし」について知りたい! ということで、リポーターAが東武鉄道「SL大樹(たいじゅ)」に乗車し、業務を体験してきました。
東武鉄道SL大樹で体験
◆SL大樹とは
東武鉄道が2017年、日光・鬼怒川エリアの鉄道沿線を盛り上げようと、約半世紀ぶりに復活させた観光列車。運行区間は下今市駅―鬼怒川温泉駅(12・4㌔)、下今市駅―東武日光駅(7・1㌔)。迫力ある車体や汽笛の音、転車台など、SLならではの魅力にファンも多い。
何度乗っても楽しく
心触れ合う時間旅行
東武鉄道SL大樹
どんな仕事があるの?
子どもたちや鉄道ファン憧れのSL大樹。接客から裏方まで、その運行に携わるお仕事を紹介します。
①機関士
1回の運行に3人が乗車。運転や安全確認、燃料の石炭を投入する業務を分担して担当。
②車掌
SLより後ろの車両を管理し、乗客の安全を守っています。
③車両係
SLの修理やトラブルの対応、客車との切り離しなどを行います。
④清掃スタッフ
乗客が気持ち良く利用できるよう、運行の前後にテーブルや窓などを清潔に保ちます。
⑤車内販売スタッフ
旅の楽しみの一つ、オリジナルグッズや「黒いアイス」などを車内を回り販売。
⑥記念撮影サービス係
プロカメラマンが旅の思い出を撮影し、販売しています(1200円)。
SL観光アテンダントについて
市観光協会所属の10人
乗務や情報発信なども

所属は日光市観光協会で、現在10人のアテンダントが在籍。アテンド担当は、東武鬼怒川線下今市駅―鬼怒川温泉駅間と東武日光線下今市駅―東武日光駅間を乗車します。
業務交代で各日3人ずつ乗車し、3両編成の車内で座席指定券の検札や記念乗車証の配布、運行時間と安全の確認、観光案内のアナウンスなどを行っています。円滑に心地よく、安全に配慮した「おもてなし」を大切にしているそう。
SL乗務のほか、下今市駅構内にある「SL展示館」の案内やSNSの更新なども担当。中でも車内で配布する「SLアテンダント通信」は人気で、毎号集めているファンがいるほど。開業当初からの取り組みで、企画から取材、原稿、イラストまでメンバーが協力して作っています。


業務タイムスケジュール
8:30 出社
乗務準備
9:00 点呼(乗車前点検)
9:20 ホームへ移動
9:33 SL大樹1号乗車(下今市駅)
車内アテンド
10:09 SL降車(鬼怒川温泉駅)
10:25 転車台おもてなし(お手振り)
乗車準備(乗車前点検)
11:14 SL大樹2号乗車(鬼怒川温泉駅)
車内アテンド
11:51 SL降車(下今市駅)
12:00 休憩
13:30 SL大樹5号乗車(下今市駅)
車内アテンド
14:06 SL降車(鬼怒川温泉駅)
14:30 転車台おもてなし(お手振り)
乗車準備(乗車前点検)
15:05 SL大樹6号乗車(鬼怒川温泉駅)
車内アテンド
15:44 SL降車(下今市駅)
16:00 事務処理
17:00 退社
業務体験
2往復のアテンドに緊張
乗客や沿線住民らの温かさに触れ感動!


6月下旬の体験当日。下今市駅の控室で貸与された制服に着替えると、期待と緊張で胸がいっぱいに。アテンダント歴5年の大野祥代(さちよ)さん(30)が体験をサポートしてくれました。

「点呼」と呼ばれる朝礼後、持ち物チェックや運行状況、報告・連絡を行い、定時にホームへ移動。ふと、大野さんから渡されたのは、車内での観光アナウンス用のカード。「え、私が?!」と一瞬ためらったものの、私が前職で企業博物館のアテンド経験があることを知っての計らいでした。「よし」と覚悟を決め、乗車までの短い時間でスピーチの練習に励みました。
そして下今市駅から始まった35分間のSLの旅。平日だったせいか年配のお客さまが多く、車内は和やかな雰囲気。いよいよアナウンスのポイントが近づくと、他のアテンダントの合図を見逃さずに「倉ケ崎SL花畑」など3カ所の名所を紹介。説明に四苦八苦しつつも明るい口調で案内すると、一斉に車外を眺め笑顔を見せる乗客の姿が。終了後には乗客から温かい拍手ももらいました。
その後も車内を回りながら、乗客との交流などを深めた私。午前と午後、2往復の業務を終えた感想は、「なんとか迷惑をかけずに務めることができた」という安心感。体験までの1週間、みっちり勉強した大樹の知識を乗客に披露する機会はなかったですが、運行に携わるスタッフの熱意やおもてなしにふれ、以前よりもっと大樹の大ファンになりました。



Q&A 仮屋薗幸さんにインタビュー
毎回異なるスピーチ考え
休日は新しい情報収集も
Q アテンダントになったきっかけは。
A 前職は成田空港のラウンジ勤務。地元の栃木に戻ってきて、日光市観光協会に入り、駅構内の案内所で案内業務をしていました。6年前、SLが運行すると聞き、得意の観光英語を生かしたいとアテンダントに応募しました。
Q やりがいを感じる時はどんな時ですか。
A 自分のアテンドを、お客さまに喜んでもらえた時。アナウンスに合わせて、乗車しているお客さまが沿線の方に手を振ってくれたり、「楽しかった」と笑顔で言ってくれたりすることが糧になります。
Q 逆に大変なことは。
A 大変と思ったことはあまりありませんが、しいて言えば、車内でのスピーチのセリフが決まっていないので勉強が大変なことでしょうか。リピーターさんにも満足してもらえるよう、リサーチを十分して常に新しい情報を話せるように努めています。アテンダント同士のスピーチも全く同じにならないように注意しているので、毎週乗っても新鮮ですよ。
Q アテンダントはどんな人が向いていますか。
A 適任なのは、日光や鉄道に興味がある方や会話が好きな方、デザインや絵を描くのが得意な方でしょうか。高校生を除く18歳以上なら応募でき、資格は必要ありません。同僚には、もともと百貨店販売員や介護職、保育士、専業主婦だ
った人などがいます。
Q お薦めの日光グルメを教えてください。
A 日光のおいしい水で作られたそば! グルメ情報は、車内でお客さまに聞かれることも多いので、休みの日にリサーチに励んでいます。
大野さんからメッセージ
最初は緊張していたようでしたが、本番は明るくアナウンスしていて、その瞬間、車内の空気がパーッと変わったようでした。お客さまがアナウンスを聞いて右、左と窓の外を見たくなるようなご案内は、私たちも学ばせてもらいたいです。
体験した感想
アテンダントのおもてなしが、SL復活に尽力された東武鉄道の皆さんとSLの乗客、沿線の住民の方、三者をつなぐ「架け橋」になっていることを知ることができました。協力してくださった皆さん、本当にありがとうございました。
とっておき情報
8月10日、SL大樹が6周年を迎えるのを記念して、オリジナルヘッドマークの掲示など楽しい企画を実施予定。詳細は後日、SL大樹公式サイトにて公開予定。