「自分史」「創作表現」を本で残す
下野新聞社編集出版部 斎藤晴彦部長に聞く
ー自費出版と魅力ついてー

 自分で本を作ってみたい。でもどうやって作るのか。そもそも、自費出版の魅力って? 出版業務に携わり約20年。編集者としてこれまで多くの自費出版作品に関わっている下野新聞社営業局編集出版部の斎藤晴彦部長(53)に、自費出版の現状や魅力について聞きました。

 下野新聞社が扱っている本は大きく分けて、企画して書店などで販売する書籍と、企業等の周年誌などの受託出版も含めた「自費出版」があります。自費出版は年間30冊程度のニーズがあり、ジャンルは自分史の希望が多い傾向ですね。かつては「戦争体験を後世に伝えたい」という内容も多かったですが、最近は自身の半生を振り返るものが多いようです。

半生の振り返り

 自費出版は歴史があり、宮沢賢治が生前に出したのは自費出版の2冊だけというエピソードも。今はブログなどで発信する方法もありますが、ノートなどに書き連ねたものを本としてきれいに〝お化粧〟し、自分の生きた証しを残せることが自費出版の魅力です。

地元で気軽に相談

 下野新聞社の強みは、編集者が直接お客さまの元に足を運び相談に乗れること。県外の出版社ではなかなか難しいかと思います。出版したい本の内容や予算などについて、気軽にご相談ください。
 (問)下野新聞社編集出版部☎︎028・625・1135(平日午前9時半~午後5時)。

自費出版を含めた下野新聞社が手掛けた本。本社1階ロビーで展示
自費出版を含めた下野新聞社が手掛けた本。本社1階ロビーで展示

下野新聞自費出版
 ジャンルベスト5

 ◆自叙伝(自分史)
 ◆歌集
 ◆句集
 ◆小説
 ◆写真集

自分の本を作ろう
ー主な工程紹介ー

 制作期間は、原稿がそろってから4カ月から半年程度。本の材料となる資料の準備から製本まで、1冊ができるまでの工程を紹介します。
 ※①②は著者自身で準備。③から下野新聞社の担当者がサポート。

❶文字原稿の作成
 「自分史」であれば書店で購入できる書き込み式ブックを活用するとスムーズ。下野新聞社発行の「マイヒストリーブック」(3面で紹介)など。

 

文字原稿以外の準備
 掲載したい写真、イラスト、絵画、家系図(手書きも可)などを用意します。

いざ、出版社へ
 出版社へ相談(下野新聞社の場合は相談無料)。①②の資料を持参し、部数や本の判型(大きさ)、スタイル、ページ数、予算などを相談します。

原稿は紙に印刷したもの、またはUSBメモリーなどのデータで
原稿は紙に印刷したもの、またはUSBメモリーなどのデータで

見積もり
 自費出版は基本的にオーダーメードなので、「印刷・製本」「編集・校正」などの費用に応じて価格が決まります。

契約

編集作業
 実際に本作りがスタート。誤字脱字、内容などに誤りがないかのチェックなどの「校正」を3回ほど行います。

内容や漢字などに間違いがないか入念に確認する担当編集者
内容や漢字などに間違いがないか入念に確認する担当編集者

装丁作成
 表紙やカバーなど全体のデザインを決定。著者の好みや作品の内容とのバランスを考えます。

印刷・製本
 校正終了後、約30日で本が完成し、著者の手元に届きます。

完成した本
完成した本

編集出版部の嶋田一雄部員に聞く
自費出版素朴な疑問Q&A

 

〝生きている証〟形に
 60~80代が「自分史」

 Q下野新聞社から、どんな方が自費出版されていますか。
 A年齢、男女比も年によってまちまちですが、60~80代の男性が多い傾向にあります。ジャンルは「自分史」が最も多く、次いで自分の「歌集」「句集」「小説」「写真集」などをまとめたいという方も。女性は、作品集と自分史が同じくらいの割合です。
 Q最低何部から作れますか。気になる値段は。
 A値段はページ数や部数、判型、仕様などにより違います。主流の四六判(128㍉×188㍉)、160㌻で100部制作した場合、130万円程度です。100部以下の部数は要相談ですが、1冊あたりの単価は割高になります。どのくらいの部数を制作するかは、親戚や友人など配りたい人のリストを作るとよいでしょう。
 Q制作期間は。また、「これはNG」という内容はありますか。
 A原稿や写真、イラストなどの素材がそろっている状態で4カ月から半年程度です。他人に対する誹謗中傷などはもちろんですが、出版物の内容や掲載された文章、写真、図表などが他人の権利を侵害する場合もNGですし、他の著作物(非印刷物も含む)から文章、写真、図表などを借りて掲載する場合(引用・転載)は適切な手続きや出典表記が必要です。
 Qこれまで手掛けた自費出版でのヒット作はありますか。
 A神山奉子(ともこ)さんの小説「国蝶(オオムラサキ)の生(あ)れ立つ樹」は、レベルが高い作品と評価されました。また、「碧い眼に映った日光 外国人の日光発見」を出版した井戸桂子さんは、全国新聞社出版協議会の「ふるさと自費出版大賞」で2015年に大賞を受賞。書店に流通もしています。

著者に聞く出版への思い

夫感じる作品 家族で紡ぐ
山口美智代さん(78)大田原

「お父さんに会えたような気がして、毎晩寝る前に欠かさず読んでいる」と話す山口さん
「お父さんに会えたような気がして、毎晩寝る前に欠かさず読んでいる」と話す山口さん

 「苦しみを好みて楽と思いせば耐えぬることはなきぞと思う」      
 亡き夫の念願だった歌集「和歌(うた)の庭先」を6月に発刊した大田原市の山口美智代さん。         
 3年前、夫の秀幸さんが死去。葬儀後、「お父さんを実感できる温かみのある紙の本を作りたい」という思いが家族に募りましたが、実際にどうすればいいのか分からなかったといいます。今年1月、本紙に掲載された編集出版部の自費出版の広告に目が留まり、すぐに連絡を入れました。       
 編集者の嶋田一雄さんとの細かなやり取りは次女が、3回の校正は長男が担当。子育てで忙しい長女もたまに手伝いで加わり、子どもたちが毎週、家に集まり行った編集作業は、「ものすごくいい時間でした」と美智代さん。
 「近くに住む私の弟や長年お世話になっている美容室にも1冊贈ろうとしたら、もっと欲しいと言って喜んでもらえたのも思いがけずうれしかった」。自費出版は夫との思い出だけでなく、周囲との絆も深めてくれました。

出版した歌集
出版した歌集

 

とちぎで生きるあなたの記録帳
マイヒストリーブック

「一問一答」形式 自分史が書ける

 半生を振り返っておきたい、家族友人に自分の歩みを残しておきたいといった人のために、便利な一冊。
 「小学生のころ好きだった科目」「今の自分に影響を与えた映画」「初任給で何を購入したか」など、生誕から幼少期、学生時代、就職、結婚、現在までを一問一答で書き込んでいくことで「自分史」が出来上がるノートブックです。
 巻末には栃木県と国内外の昭和平成年表、県内市町村合併史、物価推移表など、ノートに記入する際に役立つ資料も付いています。
【編集】下野新聞社
【体裁】B5判 並製ビニールカバー装 160㌻ 2色
【定価】1320円
 県内書店・下野新聞取り扱い新聞販売店で発売中。
 (問)下野新聞社編集出版部☎028・625・1135。