

アスポリポーターが気になる仕事を体験し、その内容ややりがいなどを紹介するシリーズ企画「お仕事体験」。第4弾は色や形が美しく季節感あふれる日本の菓子を作る「和菓子職人」です。細かい飾り付けも施す高い技術と季節の移り変わりを繊細に表現する感性が求められる仕事の一部を、リポーターtが那須烏山市の「御菓子司ひらさわ」で体験してきました。

五感で味わう芸術
伝統守りつつ進化
「御菓子司ひらさわ」で体験
親子営む〝二刀流〟の老舗店
◆「御菓子司ひらさわ」とは
1927(昭和2)年創業の老舗菓子店。3代目の平澤真さん(64)が和菓子、長男で4代目の諒太さん(38)が店内の一角で「パティスリーヒラサワ」として洋菓子を販売しています。
店内には、和菓子一級技能士の真さんが手作りする上生菓子から焼き菓子まで和洋菓子約100種が並びます。
伝統を守り、継承しながらも時代に合った和菓子を作り続けています。

和の心 季節を繊細に表現
ぼかしや成形など熟練の技
業務体験

1月下旬、緊張しながら「御菓子司ひらさわ」へ。平澤さん家族が笑顔で迎えてくれました。代表で和菓子一級技能士の真さんに「楽しみながらやりましょう」と声をかけてもらい、身支度や消毒をして和菓子作りの体験がスタートしました。

まずは、上生菓子「練り切り」の「鶯(うぐいす)」作りから。生地のあんをキッチンスケールにのせ、同じ分量にします。和菓子一級技能士の真さんは感覚で必要な量が取れるとのこと。何度やっても同じ量を正確に取れる光景を見て感動しました。

色づけでは、黄色を少し混ぜたあんと、抹茶色の2色のあんを用意。「2色の境目を、指で丁寧にぼかしながらなじませるといいですよ」という真さんのアドバイスを受けて夢中でなじませますが、お手本のように自然な雰囲気を出すことができません。その後、こしあん入りの生地を薄い布巾でねじり、絞り目を付けながら成形。春を感じる花を型取り完成です。
「水仙」でさらにぼかしの技術などを学んだ後、「桃の花」に挑戦。ピンク色のあんにこしあんを包み、外側には三角ベラで筋を入れます。真さんは左手であんを回してずらしながら、等間隔で筋を入れていきます。私も見よう見まねで挑戦しますが、左手でうまく回せません。私が苦戦する様子を見て、真さんは「修業を始めたとき、ひたすら左手でボールを持って回す練習をしましたね」と教えてくれました。


最後に「草餅」と「桜餅」の包餡(あん)を体験。「あんが真ん中にくるように意識して」とアドバイスをもらいましたが、端に寄ってうっすらあんが見えてしまい、見映えの悪さに自分でも笑ってしまいました。真さんから「味があっていい」と優しい言葉をもらい、約3時間の体験は終了。奥さんの紀子さん(63)が抹茶をたててくれ、自分で作った練り切りをいただきました。見た目はかなり微妙でしたが、おいしかったです。

体験を通し、和菓子には季節感を大切にするなど、日本人の思いが詰まっていると知りました。また職人の技術は素晴らしいと改めて実感しました。


QQ&A 平澤真さんにインタビュー
あんが命 丁寧な仕事心がけ

Q 和菓子の魅力を教えてください。
A 和菓子には、人を笑顔にしてくれる不思議な力があります。職人の技で形や色を変え、季節を写すことができるところが魅力だと思います。
Q なぜ和菓子職人になったのですか。
A 小さい頃から甘い物が好きで、特に和菓子が好きでした。自分で作ってみたいと思いました。
Q 職人になるまでの道のりは。
A 東京製菓学校を卒業後、神奈川県横須賀市の老舗和菓子店「松月」で3年半修業し、結婚後に「御菓子司ひらさわ」の3代目になりました。先代が特に力を入れていたのは製あん。和菓子はあんが命だから、上質な小豆(あずき)を使い自家製あんでなければだめだと教わりました。現在も製あんにこだわっています。
Q 和菓子を作る上で心掛けていることは何ですか。
A 誠実な心を持つこと、楽しみながら仕事をすること。和菓子を作ることが楽しいので、笑顔で作ります。また和菓子はとても奥の深く、やりがいがあります。
Q 商品のアイデアはどうやって考えていますか。
A 本を読んだり、いろいろな店を見て回ったりします。考えても浮かばないときは、頭の中を一度リセットして、考えることをやめます。すると、ふとしたときに、いい案が浮かんでくることがあるのでメモします。
Q 和菓子職人として大変なことは。逆にうれしかったことは何ですか。
A 好きで入った道なので、大変だと思ったことはありません。うれしかったことは、自分が作った和菓子を食べたお客さまが「おいしかったよ」「また来るね」と言ってくれたことです。
Q 「御菓子司ひらさわ」の今後について教えてください。
A できる限り続けていきたいです。息子は洋菓子専門ですが、いずれ和菓子の基本的なことを伝えようと思っています。孫が「やりたい」と言ってくれたらうれしいです。もちろん、息子にも孫にも無理強いはしません。本人に任せます。自分も、常に上を目指し、どうすればおいしい和菓子ができるかを考えていきたいです。

和菓子作りとは
誠実な心と笑顔大切に
暮らしに寄り添い作る



和菓子一級技能士の平澤真さんに、和菓子作りについて聞きました。
和菓子を作る上で大切にしていることは、「心」です。心が映し出されるので、丁寧に誠実な心を持ち笑顔で作っています。和菓子はあんが命なので、丁寧に製あんをしています。
材料にもこだわっています。例えば小豆は北海道産。小豆から煮てあんを作ります。製品によって大粒、中粒、小粒など種類も変えています。草餅や柏餅、お団子などの米粉製品は、県産コシヒカリを自家製粉して手作りしています。砂糖の糖度も大切にしており、製品に合わせた甘味度のものを使用します。
夏と冬では気温や湿度が違うので、水分量などの配合が変わります。春と秋が一番作りやすい季節です。一番の繁忙期は年末年始で、お彼岸やお盆など行事がある月は忙しくなります。



店では、先代が考案した「城主最中」、地元の特産品を使用して私が考案した「ふわどら」、引き継いだ「山あげ」など烏山銘菓として販売しています。和菓子と洋菓子の融合として、息子と二人でアイデアを出し合って作った「モンブランどら」も人気です。
基本的な和菓子は定番人気ですが、時代に合った商品も作っています。これからもお客さまの声も聞きながら、「変えないもの」「変えていくもの」をよく考えた商品作りをしていきます。

店主からメッセージ
初めての作業で慣れない様子もあり、最初は少し心配でしたが、だんだん慣れてきたようでよかったです。包餡も、やれば上手になれると思います。ひた向きに一生懸命向き合ってくれて、よく頑張りました。
体験した感想
手の使い方、わずかな動かし方など繊細な作業を通して、改めて和菓子職人の素晴らしさを実感しました。頭では理解したつもりでも、実際は思うように手が動きませんでした。本当に難しかったです。
味はもちろんのこと、目でも楽しめて、消費者の心まで満たしてくれる和菓子。作るだけではなく、製品の考案、デザイン、包装紙などすべてにおいて、アイデアを出し、もっと良い物を届けたい、おいしい和菓子をお客さまに、という思いが伝わってきました。
ひな祭りの
上生デコレーション

4号サイズ(直径12㌢)で3500円。一日3台限定。5日前までに予約を。
とっておき情報
▼みんなのマルシェ 24日午前10時~午後2時。リエゾンコミュニティラボ(那須烏山市田野倉48の7)。御菓子司ひらさわ、パティスリーヒラサワの菓子、クレープ、パン、アクセサリー、野菜などの販売、カイロプラクティック、小物制作体験・販売など。(問)髙野さん☎0287・83・8872。
御菓子司ひらさわ
那須烏山市金井1の10の13
☎0287・82・2627
午前8時~午後7時
㊡水曜(※本日14日は営業、18日は臨時休)
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