記者が歩く、夜の栃木 昼とは違う営みが そこに 【夜に見つめる】
総合プロローグ
12月16日の夕方。マンションの屋上から宇都宮市中心部を見渡す。西の空のオレンジ色は刻々と深まり、午後5時にもなると、まちに灯(とも)る明かりが一気に際立ってくる。夜が最も長くなる時季。乾いた風が吹き抜け、闇に包まれると一つ一つが一段と光り、輝いた。
栃木市の学悠館高に通う高橋陽(たかはしひなた)さん(19)は、夜の学びが人生の転機となった。互いに言葉にしなくても少し気持ちが理解できる仲間ができた。大多数の高校生が太陽の下で送る青春は、定時制の夜の教室にあった。「自分に合っているなと思う」。蛍光灯の下で笑みがこぼれた。
宇都宮市にある済生会宇都宮病院の県救命救急センター。夜間勤務に入る医師藤田健亮(ふじたけんすけ)さん(40)が、命と向き合う時間が始まる。センターには一般病院が診療時間を終えた後、多種多様な患者の救急搬送を求める要請が続く。「私たちが地域医療のとりで。踏ん張らないといけない」と気を引き締め直す。
埼玉県内に住む会社員青木さん(28)=鹿沼市出身=は夜、バーチャルユーチューバー(Vチューバー)に変わる。舞台は仮想現実(VR)。歌ったりゲームをしたり。装着したゴーグルの中の世界で視聴者とひとときを分かち合う。「好きなことができる時間」に発信するありのままの自分。そんな夜が楽しくてたまらない。
人知れぬ時間に働き、未知を求めて学び、誰かを守り、生活を支え、仲間とつながる。とばりが下りた地域社会では、多くの人が行き交う昼間の日常とはひと味違う、さまざまな営みが繰り広げられている。
本音が現れる夜、感情が発露する夜、少数のための夜-。ライトの下の暮らしに目を凝らせば、そこに生きる市井の人々が織りなす人生が見える。地域の片隅を照らす活動を追えば、日中には感じ取れない社会の課題やひずみ、世相も透ける。そんな世界には、私たちが忘れがちな価値観や、生きるヒントが埋もれているのではないか。

漆黒の空の下で無数に輝くまちの灯に、一人一人の息づかいを重ねる。夜に見つめる自分、大切な誰か、かけがえのない何か。足元の夜にある等身大の人生と喜怒哀楽の物語に記者が寄り添い、今を見つめる。
(『夜に見つめる』取材班)

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