これまで、生きものとの触れ合いを中心に親子で楽しめる自然体験についてご紹介してきました。サシバの里自然学校では親子向けの自然体験を実施していますが、さらに多くの子どもたちへと広げるために2020年度からは幼稚園・保育園と連携した取り組みも実施しています。

 幼稚園・保育園の皆さんには、日中の園外の活動としてサシバの里自然学校にお越しいただき、生きもの探しを中心とした自然体験を行っています。園児たちは田んぼでカエルの卵を触ってみたり、虫捕り網などでトンボやチョウ、水辺ではザリガニや小魚などを探して、観察してみたりと元気に活動しています。

自然学校の田んぼで生きもの観察に取り組む子どもたち
自然学校の田んぼで生きもの観察に取り組む子どもたち

 しかし、初めのうちは網を狙った場所に落とせない園児がほとんどです。水面をなでているだけで何も捕れず活動が終わってしまう子もいます。しかし、何度か体験に来るうちに小魚の隠れていそうな場所を見つけ出せるようになっていきます。

 さらに回数を重ねると、友達同士で昆虫を追い込むなど連携した虫捕りを編み出す姿も見られました。体験後のアンケートによると、園児たちは園や家庭でもこの自然体験の話や昆虫の話をする機会が増えたそうで、体験が印象深く残っていることがわかります。

 保育園・幼稚園などの共通の指針である「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」の中でも「自然との関わり・生命尊重」の重要性が示されており、幼児教育においても自然体験の機会は不可欠です。

子どもたちに自然学校の生きものについて説明する遠藤さん(中央)
子どもたちに自然学校の生きものについて説明する遠藤さん(中央)

 そのため、自然体験に適したフィールドを持ち、専門として活動している自然学校が幼稚園・保育園などと連携することは、幼児教育への大きな貢献となります。また多様な子どもたちの集まる幼稚園・保育園などと連携することで、子どもの自然体験の格差を減らすことにもつながっていきます。

 幼少期の体験は、その子の将来の価値観をつくり上げる大切な土台となります。一人でも多くの子どもたちに自然の素晴らしさ、楽しさを伝えるためにもサシバの里自然学校では、幼稚園・保育園などとの連携の機会を増やしていきたいと思っています。

 1年間お付き合いいただきありがとうございました。4月からは県内のさまざまな場所で子どもたちのための活動を続ける仲間たちとともに、さらにパワフルに県内の自然体験の魅力を発信していきたいと思います。来年度もどうぞよろしくお願い致します。

(遠藤隼(えんどうじゅん)・サシバの里自然学校校長)

■とちぎ子ども自然体験活動ネットワーク登録団体のイベント情報

春の野遊び学校2023(市貝)

・日時…21日、30日、4月1日、6日

・参加費…4千円

親子でツリークライミング(市貝)

・日時…4月8日

・参加費…大人(高校生以上)3500円、子ども(小学生~中学生)3千円

※申し込み、イベント詳細はいずれもサシバの里自然学校ホームページへ

◆遠藤隼(えんどう・じゅん)さん◆1984年、宇都宮市生まれ。大学卒業後、静岡県にある自然学校職員として子どもキャンプやエコツアーを指導。2012年8月から1年以上かけて、自転車でユーラシア大陸横断・南米縦断をした。2021年度宇都宮大大学院修了、研究テーマは「里山での幼児向け体験型環境教育の実践と評価」。現在はサシバの里自然学校校長、作新学院大女子短大部非常勤講師。