特別講演
「なな転び八起~いま私が伝えたいこと~」

元スピードスケート選手 髙木菜那 氏

自分と向き合い考え動く

 私がスピードスケートを通して学んできたことを三つのテーマに分けてお話しします。一つ目は「私が強くなるためにしてきたこと」、二つ目は「挑戦することの大切さ」、そして最後に、「心の大切さ」です。

 まず、「強くなるためにしてきたこと」です。練習の効率を上げるために大切だと感じたことが三つあります。「自分と向き合う」「自分の頭で考える」「意見を素直に受け入れる」です。

確かな目標設定を

 「なぜスケートをしているの?」「本当にやりたいことは何?」と常に自問してきました。時間を取って自分と向き合わなければ、本当の目標は見えてきません。バンクーバー五輪で妹の滑る姿を見て「私もあの舞台に立ちたい」とソチを目指しましたが、出場して「五輪は出る場所ではなく、勝ちにいく場所だ」と痛感しました。そこで平昌では「金メダルをとる」と目標を再設定し、自分と向き合い続けた結果、夢をかなえることができました。自分を深く知ることが、確かな目標設定につながるのです。

 センスやポテンシャルだけでは、いずれ壁にぶつかります。その時、自分の頭で考え、答えを導き出す力がなければ、先へは進めません。平昌五輪後、私は「さらに速くなるにはどうすればいいか」を考え抜き、新たなトレーニングが必要だと判断し、室伏広治さんにご指導をお願いしました。このように、自分で課題を見つけ、考え、行動に移すことが成長の鍵となります。

 そして、自分とは違う他者の意見にこそ、成長のヒントがあります。かつて私は、良い結果を出しても自分を褒めることができませんでした。妹にそのことを指摘され、「自己ベストは自分が頑張った証なのだから、もっと自分を認めてあげればよかった」と気付かされました。他者の言葉を一度受け入れ、自分に落とし込んでみることが、新たな視点を与えてくれるのです。

 次に「挑戦することの大切さ」です。私が引退時に後悔がなかったのは、結果はどうあれ、常に全力で挑戦し続けてきたからです。現役時代、私が大切にしていたのは「止まらない」ことでした。調子が良い時に満足してしまえば、成長は止まります。周りは常に進化しており、現状維持は実質的な後退なのです。どんな時も、今より上を目指してアップデートし続ける意識が不可欠です。

 しかし、引退して明確な目標を失った時、私は足踏みしてしまいました。スケートほど情熱を注げるものが見つからず、「中途半端になるくらいなら挑戦しない方がいい」とさえ考えてしまったのです。この経験を通して、夢や目標を持つことがいかに難しく、幸せなことだったかを痛感しました。ですが、夢や目標が定まっていなくても、挑戦は誰にでもできます。皆さんに挑戦の大切さを語るからには、私自身も新たな一歩を踏み出し、挑戦を続けていきたいと思います。

幸せを共有しよう

 最後に「心の大切さ」についてお話しします。北京五輪で、私はこのことを痛感しました。金メダルへの重圧から自分を追い込み続けた結果、私の心はスタートラインに立つ前に壊れかけていました。この経験から学んだのは、どんなに強い人間でも心は削られ、その限界は誰にでもあるということです。体は無理をすれば痛みとしてサインを送りますが、心は限界を超えてからでしか悲鳴を上げません。だからこそ、つらい自分、頑張っている自分をまず自分で認め、時には休む勇気を持つことが本当に大切です。

 その一方で、苦しい状況にあった私を支えてくれたのは、SNSを通して届いた「頑張ったね」という温かい応援の言葉でした。しかし、SNSは時に刃にもなります。今でも私の元には心ない言葉が届くことがあります。これから大きなスポーツの大会が続きますが、誰も負けたくて戦っているわけではないことをどうか忘れないでください。悔しい気持ちを選手個人への攻撃に向けるのではなく、相手を思いやる心を持ってほしいのです。

 人は一人では生きていけません。負の感情ではなく、「うれしいね」「楽しいね」という幸せを共有してください。私も、多くの人の支えがあったからこそ、最後まで笑顔で戦い抜くことができました。ご自身の幸せのために、心も体も健康でいられることを心から願っております。本日はありがとうございました。

基調講演1
パラリンピックへの挑戦を通じて学ぶ
目標達成の過程とパラスポーツの現在未来

NTT東日本株式会社 経営企画部
パラ陸上選手 高桑 早生 氏

持てる力を最大限生かす

 私に転機が訪れたのは12歳の時。骨肉腫という小児がんが左足に見つかり、13歳で膝から下を切断しました。膝から下が義足です。今年で20年になります。機動力は変わりませんが、足首が動かず、動きに制限が出ることもあります。しかし、訓練によって乗り越えることができます。今では、日常生活を全く問題なく過ごせるようになりました。

 そんな私が陸上競技に出会ったのは高校生の時です。新しいことに挑戦したい、そう思っていた直後でした。競技用の義足で、およそ人の足には見えない道具をつけてすさまじいスピードで走る選手の姿に、衝撃を受けました。「なんだ、あのカッコいい道具をつけて走る人たちは!」それが、私と陸上競技との素晴らしい出会いでした。

 そして高校1年生、2008年は北京パラリンピックの年。映像で初めて見たパラリンピックの世界。私が始めた陸上を突き詰めた先には、こんな世界があるんだと胸が熱くなり、陸上競技にのめり込んでいく、大きなきっかけとなりました。

 大学では体育会競走部に入部し、一般学生と共に練習に励み、12年のロンドン大会で、初めて日本代表になりました。以来、4大会連続でパラリンピックに出場しています。

 パラスポーツは、既存のスポーツを障害者の要求に応じて修正したものです。「できないことを数えるのではなく、今持っているものを最大限に生かす」という素晴らしい理念があります。IPC(国際パラリンピック委員会)が掲げる四つの価値、「勇気」「強い決意」「インスピレーション」「公平」。これは、私たちが競技を通じて、伝えたいことそのものです。

 13年に東京大会の開催が決定して以降、日本の、そして世界のパラスポーツ界は、さらなる高みを目指し、大変な盛り上がりを見せていました。東京大会は1年延期、そして無観客開催という少し残念な結果になりましたが、その熱意は、昨年のパリパラリンピックで見事に結実し、新たな時代を告げる素晴らしい大会になったと感じています。

 パラリンピックは、言葉の通り「もう一つのオリンピック」へと、今まさにすごいスピードで成長を続けています。私はまだ現役選手として、この素晴らしい舞台に立ち、挑戦を続けます。目標は、来年名古屋で開催されるアジアパラゲームズで金メダルを獲得することです。皆さまにも、このパラスポーツが持つ無限の可能性と、その魅力を、ぜひ知っていただけたらうれしいです。

基調講演2
人が育つ、組織が変わる。
目標管理とキャリア開発の実践

株式会社TMC経営支援センター
代表取締役社長 葛西 美奈子

成長するための羅針盤に

 働き方改革が進む中で、人を育て、定着させることは、多くの企業にとって非常に重要になっています。人材の成長と挑戦、そして活躍は、企業の未来をつくる上で最も重要なテーマです。

 有効な仕組みの一つとして「目標管理」があります。目標管理は、単に業績を上げるためだけではありません。社員一人一人が自分の仕事に意味を見いだし、成長するための羅針盤です。

 皆さまは、ご自身の目標を明確に持っていらっしゃいますか? 会社の理念や年間の目標はもちろん、今月、今日の目標。この目標があるかないかで、結果は大きく変わってきます。目標が曖昧では、行動も漠然としたものになり、成長にはつながりません。

目標管理を成功させる鍵は「SPDCAサイクル」です。

まず、現状を正しく分析し、自分自身の強み・弱み、そして機会と脅威を把握します(Survey)。そして、具体的で測定可能な目標を設定し、それを達成するための行動計画を立てて(Plan)、目標達成に向かう行動を習慣化します(Do)。目標は立てっぱなしでは意味がありません。定期的に進捗(ちょく)を確認し(Check)、必要であれば軌道修正を行う(Action)。この繰り返しが、人を育て、組織を活性化させます。

ぜひ、目標管理を取り入れ、人が育ち、組織が変わる喜びを実感していただければと思います。

NTT東日本 栃木支店
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