心浮き立つ日も、思い悩む日も 多様性に満ちた夜に自分自身を見つめて【夜に見つめる】

総合エピローグ

11:30

 6月中旬、午前3時半ごろ。下野新聞社本社の屋上から、街を見渡す。梅雨のさなか、未明の時間はまだ肌寒い。東の空がじわじわと明るみ始めた。夜が終わりを告げようとしている。

 

 

 「あなたにとって『夜』はどんな時間ですか?」

 

 紙面やウェブサイトで読者に呼びかけたところ、ウェブフォームや手紙などでさまざまな投稿が寄せられた。取材班は全てを読んだ。

 

読者から寄せられた手紙。さまざまなエピソードが記されている。
読者から寄せられた手紙。さまざまなエピソードが記されている。

 

 「自分の考えを整理して気持ちをリセットする時間」「誰にも邪魔されないリラックスした時間」「介護を終え自由で幸せな時間」-。思い思いの過ごし方が浮かぶ。

 夜という時間が、自分自身と深く向き合わせてくれる。故人や過去を思い出す日もあれば、明日の自分を描く日もある。

 

 「夜は『明日』という地獄への入り口」。暗く、未来が見えない日々を打ち明ける投稿もあった。家族の介護で緊張感と疲労を抱えたまま朝を迎える人もいる。孤独や不安に襲われるのもまた夜の持つ顔だ。

ウェブフォームには不安を打ち明ける投稿もあった。
ウェブフォームには不安を打ち明ける投稿もあった。

 

 ■    ■

 

 多くの「夜」を見つめてきた。

 昼間の社会が正常に動くために、インフラを守る人。命と向き合う人。お酒を飲み、仲間と楽しむ人。夢のために勉学に励む人-。

 視線の先にいたのは、社会に大きな影響を与えたり、偉業を成し遂げたりした人たちではない。地域のすぐ側にいる人の、すぐ側にある夜の日常を通じた人生の物語を描いた。

 

 「今からでも何かを始めたいと思わせてくれた」「深夜に聞くラジオのような連載」。こんな便りを送ってくれた人もいた。

 当たり前過ぎて目を引く存在ではないから、じっと目を向けなければ見逃したり聞き流してしまったりする。ちっぽけなものかもしれない日常が、一人一人のともしびのような小さな営みが、地域社会を形作り、支えている。

 

 ■    ■

 

 21日、1年で最も夜の時間が短い夏至を迎えた。本格的な夏が訪れ、夜の時間は少しずつ延びていく。

 誰もがみな等しく迎える夜。心が浮き立つ日もあれば、思い悩む日もあるだろう。そんな多様性に満ちた夜に、いま一度自分自身を、見逃してしまった何かを見つめてみよう。どんな夜も明ける。明日がある。

 (「夜に見つめる まちに灯る物語」は終わります。この企画は延藤哲史(のぶとうさとし)、大貫茉伊子(おおぬきまいこ)、小玉義敬(こだまよしたか)が担当しました)

朝日が差し込む宇都宮市内。どんな夜も明け、明日を迎える=5日午前4時50分、宇都宮市昭和1丁目、ドローンから、広瀬華撮影
朝日が差し込む宇都宮市内。どんな夜も明け、明日を迎える=5日午前4時50分、宇都宮市昭和1丁目、ドローンから、広瀬華撮影