台風24号の強い風で倒れた並木杉。温暖化が進むと、より強い台風の発生が懸念される=2018年10月1日午前、日光市倉ケ崎新田

 冬晴れとなった先月22日朝。日光市大沢町の国道119号付近で、日光杉並木の保護に取り組むボランティア「杉の並木守」のメンバー10人ほどが、並木杉の根元に散らばる枝の片付けやごみ拾いに励んだ。

 「あの台風で落ちた枝もありますよ」。作業中、近くに住む並木守の班長、狐塚貞夫(こづかさだお)さん(63)は足元に目を落とした。

 昨年10月1日未明、県内を直撃した台風24号。今市では観測史上最大の最大瞬間風速22・9メートルを記録した。最も古い木で樹齢400年近い並木杉は、20本以上が倒れた。路上には枝や幹が散在した。

 国内で唯一、国の特別史跡と特別天然記念物に二重指定されている日光杉並木街道は日光、例幣使、会津西の3街道延べ約37キロからなる。県文化財課によると、1961年度に約1万6500本確認していた並木杉は、この半世紀で約4千本減った。

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 老齢化、車の排ガスや振動-。バイパス整備など樹勢回復の試みは進められているが、さまざまな原因で衰える並木杉に、激しい風雨が追い打ちを掛ける。

 最近は台風や突風に見舞われた年に倒木が多く、2013年度54本、15年度41本が倒れた。18年度は11月末までに25本で、同課は「多い方の年」と振り返る。

 気候変動が進めば、より強い台風が発生するとの予測がある。「杉並木は通学路だった。子どもの時から慣れ親しんできた」と狐塚さん。「地域の財産を守っていかないといけない」

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 「本当に全て流された。壊滅。言葉が出なかった」。山あいの日光市三依地区で「独鈷沢(とっこざわ)わさび園」を営む山口義一(やまぐちよしいち)さん(66)には、15年9月に発生した関東・東北豪雨後の光景が脳裏に焼き付いている。50年以上守ってきた40アールのワサビ田は、濁流で無数の岩と流木、土砂に姿を変えた。

 17年前、亡くなった父の後を継いだ。斜面に沿って整然と築かれた石積みに清らかな沢水が流れ込み、緑鮮やかな葉が奥へと続く。そんなワサビ田が、美しいと思ったからだ。

 ただ近年は豪雨被害が続く。03年には台風で田全体の半分ほどが被害を受け、07年にも再び一部が流された。さらに15年の関東・東北豪雨。「おやじの時はそんな被害、一度も聞いたことがなかった」

 短時間で集中的に降る「ゲリラ豪雨」の影響か、土砂が以前より頻繁に田に入るようになった。山の保水力や気温の変化も感じる。沢の水量と水温が安定しないとワサビの質に響くため、敏感になっている。

 温暖化が進むと、気象は「極端化」し短時間豪雨の回数が増える半面、雨が降らない日も多くなるとみられる。「山奥の美しいワサビ田にこだわりたい。その分、豪雨は怖いよね」。山口さんは関東・東北豪雨の後、2年をかけ、ようやく10アールまで復活させた。だが、気掛かりは消えない。