那珂川を遡上する稚アユ。気温の上昇に伴って水温が上がり、遡上時期に遅れが出ていると指摘されている=2017年5月

 6月1日、県東部を流れる那珂川に活気が満ちる。日本有数の天然アユの宝庫。解禁日のこの日は、県内外から釣り人が集まる。

 「昔から『一番上り』が早い年は、大漁って教わったんだ。今は解禁にアユの体が間に合わない」

 シーズンが終わった昨年11月下旬、那須烏山市宮原、おとりアユ店経営小森謙次(こもりけんじ)さん(72)は川面を見つめた。「上り」とはアユの遡上(そじょう)を指す。親子3代、那珂川を見続けてきた。確実に遅くなっていると感じる。

 30年前、早い年は2月末から3月初旬に一番上りが来ていた。ピークは4月。茨城県へ産卵に向かう下りは盆に始まり、彼岸が最盛期だった。

 最近の一番上りは4月に入ってから。6月に遡上が最も多くなる年もある。下りは9月以降。「昔じゃ考えられないよ」。小森さんは苦笑いを浮かべた。

 県水産試験場の調査が、小森さんの実感を裏付ける。1995年以降の遡上日や群の数を分析すると、遡上時期が遅れている傾向がある。特に2009年以降、大半の年で遡上のピークは6月にずれ込んでいた。

 「温暖化による気温上昇に伴い水温が上がっている影響」。同試験場の高木優也(たかぎゆうや)主任は考察する。

 アユは秋に水温の低下を感じて成熟するため、水温が高いと産卵が遅れる。その分、冬場に海で育つ稚魚が、川へ遡上できる体になる期間も後倒しに。結果、遡上したアユが十分育つ前に6月の解禁日を迎え、天然アユの釣果は落ちる。

 那珂川に限らない。同じく天然アユで有名な長良川(岐阜県)の郡上漁業協同組合の白滝治郎(しらたきじろう)副組合長(61)も「昔じゃあり得ないサイクル」。神通川が流れる富山県の水産研究所も「遡上も成長も遅くなっている」と指摘した。

 「夏の異常気象で、ご苦労されたと聞いています」

 昨年11月末、県内ゴルフ場のグリーンキーパーが集う勉強会で、県ゴルフ場協議会の高山哲男(たかやまてつお)事務局長(60)がねぎらった。本県には125のゴルフ場があり、人口比では全国トップ。猛暑の影響は、グリーンの芝にのしかかった。

 「何ホールか、とろけてしまった」。同協議会芝草管理研究会の橋本進(はしもとすすむ)会長(43)は悔やむ。多くのゴルフ場のグリーンに使われている「ベント芝」は寒冷地型で、生育に適正な気温は15~25度。猛暑にさらされ散水が足りないと枯れる。一方で水がたまり過ぎると、蒸発時に芝が蒸され、とろけるように腐る。

 コースの売りであるグリーンの状態の良しあしはすぐに広まり、客足に響く。さらに昨年は「雨じゃなく、暑さでキャンセルが出た」ほどの異例な夏だった。

 温暖化で気象条件がより過酷になれば、グリーンキーパーやゴルフ場の負担は増す。自然相手の屋外レジャー。気候変動の影響は無視できなくなりつつある。