民間施設に掲示された「熱中症避難所協力店」の張り紙。「どうぞお気軽にお立ち寄りください」と記されている=2018年7月、宇都宮市内

 真夏日が続いていた昨年8月中旬の午後。宇都宮市江野町のオリオン通りでチラシ配りをしていた若い女性が、宇都宮オリオン通り商店街振興組合事務局の松田法子(まつだのりこ)さん(54)に近づいて来た。「気持ちが悪くなってしまって」

 すぐに近くのギャラリー「オリオンACぷらざ」に案内。長椅子でしばらく横になって休んでもらった。

 ACぷらざは市が取り組む「熱中症避難所」の協力店。「もともとオリオン通りには冷房の効いた休憩スペースが少ない」。そう話す松田さんは「お年寄りや小さい子ども連れなど『暑いから休ませて』という人は結構多かった」と、昨夏を振り返った。

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 東日本大震災直後で、電力供給が厳しかった2011年6月。厚生労働省は熱中症予防対策の一環として、緊急時に市民らが涼しい場所に避難できるよう民間店舗に協力を呼び掛けてほしいと、保健所を設置する自治体などに要請した。

 この通知を基に、宇都宮市は翌月から「避難所」の取り組みを始めた。

 市有施設を「熱中症避難所」、民間施設を「熱中症避難所協力店」と位置付け、暑さで具合が悪くなった人に涼しく休める場所などを提供する。両施設には目印となる張り紙や、応急処置方法を記したマニュアルを配布している。

 市保健所の担当者は「協力店には無償で、できる範囲で対応していただいている」。昨夏は薬局や理容室、コンビニエンスストアなど過去最多の約1670施設が協力店として参加した。これほどの規模での熱中症避難所は、県内では他に例がない。

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 同様の取り組みを県レベルで実施しているのが、全国的にも暑さで有名な地域のある埼玉県だ。

 名前は「まちのクールオアシス」。宇都宮市と同様、11年にスタートした。10年の猛暑で熱中症による救急搬送者数が増えたことがきっかけだった。

 施設数は当初の1150から、昨年9月末現在で約7600にまで増えた。大手スーパーやコンビニ、地域の商店や飲食店など幅広い。「行政施設は数に限りがある。街なかの熱中症対策ではいかに民間の力を借り、巻き込んでいけるかが重要」と、同県の担当者は説明する。

 宇都宮市平松本町の協力店「ミント薬局」の管理薬剤師一迫卓哉(いちのはさまたくや)さん(42)も「取り組む店舗の数が増えることが大切」と考えている。

 他の協力店主からは「良い取り組みだけに、もっとPRが必要」との声もある。「『避難所』が身近にあるのが当たり前になれば利用のハードルも下がり、外で無理をしてしまうことも減るのではないか」。一迫さんの実感だ。