夏前から暑かった影響で、昨年はエアコンの売り上げが伸びた=2018年5月、宇都宮市内の家電量販店

 2年前の7月中旬、宇都宮市駒生町に1人で暮らす女性(85)は朝食後に気分が悪くなり、横になった。翌朝、訪ねてきた近くの知人が熱中症を疑い、一緒に医療機関に行くと、脱水症状で点滴が必要だった。

 「熱中症なんて言葉も知らなかった。寝ていれば治ると思っていた」。女性は「エアコンも必要ない」と設置していなかったが、その後すぐに導入。昨夏は体調を崩さずに過ごせた。

   ■   ■

 高齢者は体内の水分量が若い時より少ない上、暑さや喉の渇きを感じにくくなるため、注意が特に必要だ。例年、熱中症による救急搬送者の4~5割が65歳以上。エアコンによる温度調整で防げたケースも多いとみられる。

 ただ「エアコンを『もったいない』と消しちゃうこともある」と、同市の城山地域包括支援センター長の高橋春子(たかはしはるこ)さん(67)。駒生町の女性を例に「日頃の様子の確認や声掛けなど、熱中症対策は周囲の協力も大切」と強調した。

 猛暑への適応には、エアコンとの上手な付き合いが不可欠だ。

 環境保全活動に取り組む佐野市のNPO法人「エコロジーオンライン」理事長の上岡裕(かみおかゆたか)さん(58)は、空調が効きやすい家造りやグリーンカーテンとの併用など省エネにつながる「適切な使用」を呼び掛ける。

 かつては「できるだけ使用を控える」方向だったが、シフトした。「暑さによる命の危険が身近になった。活動の質自体を変えないといけない」

 県地球温暖化防止活動推進センターによると、県内の世帯当たりの二酸化炭素排出のうち、冷房が占める割合は2%。テレビ(3%)より少なく、暖房に比べると7分の1だ。

 センター事務局長の増渕弘子(ますぶちひろこ)さん(57)は「無駄遣いは良くないが、猛暑の際にはためらわず効果的に使うべきだ」と指摘する。

   ■   ■

 頻発する猛暑は、社会保障にも影響を及ぼす。

 厚生労働省は熱中症対策として、昨春から生活保護を受給し始めた世帯を対象に、高齢者や障害者がいるなど一定の条件を満たせばエアコン購入費(上限5万円)を支給できるようにした。県内では計12件の支給があった。

 エアコンの所有はこれまでも認められていたが、今回の購入費支給について、同省の担当者は「受給し始めたばかりだと持ち合わせがなく、買うまでに熱中症になってしまう危険性がある」と、暑さの「緊急性」を理由に挙げる。

 「購入費の支給に国が踏み込んだのは、本当に暑さの危険性が高くなってきたということだ」。生活保護問題対策全国会議(大阪市)の事務局長を務める小久保哲郎(こくぼてつろう)弁護士(53)はそう受け止める。一方、支給について「以前からの受給者に認めないのは不徹底」として、さらなる対策の充実を求めている。