服の中に風を通すファン付き作業服。両脇に小型のファンが取り付けられている=1月中旬、宇都宮市西川田町の小平興業

 軽いモーター音とともに小型のファンが回り、作業着が膨らんできた。

 「おととし、100着買いました」

 宇都宮市西川田町の土木建設業「小平興業」。安全管理を担当する鈴木幹一郎(すずきかんいちろう)さん(54)がファン付き作業服のスイッチを入れた。服の中に風が通り、ファンは強弱によるが、数時間持つ。

 近年、現場の詰め所ではエアコンの他に塩あめや経口補水液などが常備され、同社は5年前、ヘルメット後部に付ける首筋の日よけも導入。ファン付き作業服は現場監督や作業者、協力業者にも配布した。

 県内大手の渡辺建設(宇都宮市今泉新町)の労務安全室長細谷房夫(ほそやふさお)さん(62)も「元請け企業としては、しっかりとした安全教育やハード面整備の役割が増している」と強調する。

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 主に屋外作業となる土木や建設工事。猛暑は命の危険に直結する問題だ。

 「労働現場での熱中症対策の意識はかなり進んできている。正直、対策を迫られるほど暑さが厳しくなったことが大きい」。栃木労働局の担当者は、現場の変化を説明する。

 2010年、全国の労働現場で熱中症により00年以降最多の47人(本県1人)が死亡した。気象庁が「異常気象」と認定したこの年の夏ごろを境に、特に意識が高まってきたという。

 本県では14年にも1人が死亡。15年には全国29人のうち県内で3人の死者が出た。同労働局は16年夏から建設、農林、警備業を対象に、熱中症対策に特化したアンケートを実施。建設業では「休憩場所の設置」や「定期的な水分・塩分の補給」などの実施率は9割を超え、基本的な対策が浸透してきている一方で、課題も浮き彫りになっている。

 大規模な事業所(25人以上)に比べ、比較的小規模な事業所(15~24人)で、実施率の低い項目が目立った。暑さ指数の低減対策、指数が高い場所で働く際の作業時間の短縮、熱への順化期間の設定-。こうした設問では実施率が最大25ポイント低かった。

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 「下請けの末端では行き届いていない面もあるかな」

 宇都宮市内の40代建設会社社長は打ち明ける。いわゆる「一人親方」として、外部の職人を集めて仕事を請け負っているが、作業性を優先させてファン付き作業服を着なかったり、深酒や朝食抜きのまま働くなど個人が体調管理を怠ったりして倒れるケースも見られるという。

 同労働局は、今年は春にアンケートを行う準備を進めている。前回と同じ比較的小規模な300以上の事業所を対象に、昨夏の猛暑でどの程度、対策が進んだかを把握する。担当者は「啓発パンフレットも送り、『熱中症は防げる』ということをあらためて分かってもらいたい」と訴える。