新井 拓也さん(33歳)
新井 拓也さん(33歳)

「一番好きな野菜」 30歳で栽培の道に

 寒い日の鍋料理や薬味に欠かせない野菜といえば「長ネギ」。県南の佐野市でJA佐野の「佐野ネギ出荷部会」(部会員22人)に所属する新井拓也さんは、長ネギ栽培に意欲を燃やす一人です。

 就農前はトラックドライバーや会社員として勤務。実家で米麦農家を営む父を手伝ううちに農業の魅力に目覚め、30歳を機に「野菜のなかで一番好き」という長ネギ栽培で独立しました。栽培経験や専門知識はありませんでしたが、先輩農家の「栽培する場所とやる気さえあれば大丈夫」という言葉に背中を押され、今日に至ります。

 長ネギは定植時期のわずかな違いで生育状況に大きな影響を及ぼすデリケートな野菜。現在、新井さんは50㌃のほ場で、「関羽一本太(かんういっぽんふと)」「夏扇(なつおうぎ)」「龍(たつ)まさり」を栽培。今季からは「白翠(はくすい)」「清輝(きよてる)」も加えた5品種に増やし、佐野の気候に適した品種を見極めるため、さまざまな品種を試しています。

 就農から3年。まだまだ試行錯誤の中、特に注意を払っているのが雑草の除去です。就農当初はあっという間に生えてしまう雑草の処理に苦労したそうですが、「いい農家は雑草を生やさない」と知り、畝の作り方や土寄せの方法を工夫しています。

太く長く育った「さのまる葱」
太く長く育った「さのまる葱」

佐野らーめんなどに安定供給目指して

 昨年夏はゲリラ豪雨や雹(ひょう)害により病気の被害も一部で出ましたが、出来は上々。現在、収穫作業の真っ最中で、「甘くて太く長いネギに育ちました」と胸を張ります。SNSで日々の作業や農業の魅力を発信する地道な取り組みもあり、新井さんの周囲には作業を手伝ってくれる仲間が集います。

土を落とし、調整作業後に出荷します
土を落とし、調整作業後に出荷します

 栽培した長ネギは、JA佐野を通じて「さのまる葱」の名で各市場などに出荷されるほか、一部は知り合いの地元ラーメン店にも供給。昨年11月に発足した部会では、「さのまる葱プロジェクト」を軸とした佐野市産ネギの認知拡大に向け、さまざまな取り組みを実施しています。「さのまる葱プロジェクト」とは、ネギの売り上げの一部を地元佐野市へ寄付する活動で、チーム佐野で取り組む持続可能な社会貢献活動です。将来的には「佐野らーめん」で有名な地元ラーメン店への販路拡大に伴い、年間を通して安定供給できる体制を整えていくのが目標だそうです。

 「佐野はイチゴ栽培が有名ですが、ゆくゆくは『佐野といえば長ネギ』と言われる存在にしたい」と抱負を語る新井さん。おいしい長ネギを栽培するのはもちろん、経営面も考慮した農業を模索しています。