生まれて間もない黒毛和種の子牛
生まれて間もない黒毛和種の子牛

将来のブランド和牛を育てる姉弟

 ブランド和牛「とちぎ和牛」に代表されるように畜産業が盛んな栃木県。一般的に和牛が私たちの口に入るまでには、繁殖農家が約10カ月間子牛を育て市場に出荷。その後、肥育農家が引き継ぎさらに約20カ月かけて大きく育てます。こうして育てられた牛の中で、那須地域で育ち、厳しい品質基準をクリアしたものだけが「那須和牛」として販売されます。

 今回紹介する渡邉千夏さん(26)と光さん(23)の姉弟は、JAなすのの和牛部会に所属する繁殖農家。祖父の代から畜産に携わる3代目で、現在、父 毅さんとともに母牛70頭と子牛50頭を飼育しています。

渡邉 千夏さん(右)と光さん
渡邉 千夏さん(右)と光さん

 高校卒業後に父の希望もあり就農した千夏さん。専門学校で家畜人工授精士の資格を取り、近隣牧場での研修を積んで実家に戻った光さん。二人は、日々、繁殖用の雌牛の飼育、種付け・人工授精、妊娠・出産、子牛の育成などを行っています。餌やりは毎日朝夕の2回で、母牛の世話は主に父 毅さんと光さん、子牛は千夏さんが担当しています。

若い和牛繁殖農家のこだわりと夢

 渡邉さん宅で導入しているのは早期離乳。千夏さんは「生後早い段階で母牛から離すことで、食べる餌の量や体調変化を管理・把握できる」といいます。繁殖する際には血統の偏りが出ないように組み合わせも考慮。近年は、繁殖を終えた母牛を食肉用に飼育する「肥育」にも取り組んでいます。

 飼育する上で特に注意しているのが気温の変化。光さんいわく「気温が高いと発情のタイミングがずれたり、食べる量が減ったりする」そうで、連日暑い日が続いた昨年の夏は、牛舎に設置したカメラで頻繁に牛たちの状態をチェックしました。飼料代の高騰も深刻です。渡邉さん宅では、餌となるコメや草を自家栽培していますが、それでも影響は少なくないといいます。

2人から餌をもらう子牛たち
2人から餌をもらう子牛たち

 そんな千夏さんと光さん2人の目標は、そろって「和牛の認知を高めること」といいます。やみくもに規模拡大を目指すのではなく、「将来、那須和牛として多くの人に喜んでもらえる牛を育てたい」と抱負を語ってくれました。JAなすの管内には那須和牛を扱った精肉店、飲食店、旅館も多 数あります。那須にお越しの際には、ぜひその味を堪能してみてはいかがでしょうか。