公務員獣医師の不足に本県をはじめ各自治体が苦慮している。相次ぐ高病原性鳥インフルエンザや豚熱(CSF)の発生対応が求められ、役割や責務は増している。国は地方への財政援助など人材確保策の支援を強化すべきだ。
県採用の獣医師は畜産農家を訪問し、家畜伝染病の予防や衛生管理を指導する。食肉検査や動物愛護の指導、試験研究などの業務もある。
ただ、獣医師はペットなどの小動物診療に人気が集まり、公務員獣医師の確保は全国的に厳しい。農林水産省が公表した獣医師の届け出状況によると、2022年12月末時点で全国約4万人のうち小動物診療が全体の約41%に対し、公務員は約23%。本県でも738人のうち小動物診療は約33%で、公務員は約23%。新卒獣医師学生も小動物診療希望者が多いとされる。
獣医師確保へ向け、県は採用試験を年3回実施し、そのうち1回は本年度から都内を会場に設定した。初任給調整手当による賃金の上乗せや、大学生の職場体験、獣医学系大学へのリクルートなどにも取り組むが、苦戦している。
23年度までの5年間の採用予定数は年間5~13人に対し、最終合格者は同6~16人となったが、辞退者がいるため予定数を満たしていない。宇都宮市でも獣医師の採用は難航しており、23年度は受験者自体がゼロだった。
関東知事会は10月の会合で公務員獣医師の確保に向け、国へ要望することを決めた。福田富一(ふくだとみかず)知事はさまざまな取り組みを説明し「残念ながら人員確保ができない」、熊谷俊人(くまがいとしひと)千葉県知事も「公務員獣医師は人気がない。不足が深刻な状況」と発言した。
同会は、と畜検査など公衆衛生に従事する公務員獣医師への就業を志す、獣医学課程がある大学への地域枠入学者・獣医学生に対する修学資金給付制度の創設と、農林水産分野の「獣医療提供体制整備推進総合対策事業」予算を十分確保するよう求めている。
日本の畜産を守っていくためにも国は地方の実情を踏まえ、これまで以上の財政的な手当を考えるべきだ。
一方、県獣医師会は不定期だが、獣医師の仕事を知ってもらうため高校生向けに市民公開講座を開いている。県も県内高校などへ出向き、生徒が目指す職業の一つとなるよう公務員獣医師を周知する取り組みを進めるべきだろう。