JR東日本大宮支社が小山駅在来線改札内の空きスペースを活用し、立ち飲み店や学生向け待合室を開設する短期実証実験を行った。電車やバスの待ち時間を有効活用してもらう取り組みだが、利用者にはおおむね好評だったという。
とりわけ9月に開いた立ち飲み店「ちょい飲み 駅角おやま」は同支社管内で初の試みとして注目を集め、仕事帰りの通勤客らでにぎわった。鉄道の利用促進やにぎわい創出のために今後、常設化を視野に入れてほしい。
「ちょい飲み」では、地元産の日本酒の飲み比べセットやクラフトビール、ジン、ソフトドリンクなどを販売した。各蔵元などの担当者らが立ち会い、地場産品をPRする絶好の機会にもなった。
利用者からは「乗り換えの待ち時間にちょうどよい」「常設にしてほしい」といった好意的な意見が多数寄せられたという。小山でクラフトビールやジンが製造されていることを知ってもらう機会にもなった。
店内では、電気通信工事に使用され通常は廃棄されてしまうケーブルドラムをテーブルとするなど、鉄道関連の廃材を再利用。鉄道好きの心をくすぐる仕掛けで「ちょい飲み」を目当てに訪れた人も少なくはなかった。
首都圏と比べて運行本数の少ない県内の鉄道は、利便性の向上が課題だ。コロナ禍で落ち込んだ乗客数は回復傾向にあるものの、鉄道会社が採算性を重視する流れの中では運行本数が増える見込みは少ない。
そうした中、駅での待ち時間をいかに快適に過ごせるかは、利用者の維持・増加につなげる一つの要素となる。その場で気軽に地場産品に触れる機会があれば、相乗効果も期待できる。
同支社によると今後、運営を恒常化するかどうかは未定だという。改修・運営コストや駅内外の商業施設との調整など課題もあるだろう。
宇都宮駅に次いで県内第2位の乗客数を誇る小山駅。西口の再開発ビル「ロブレ」の建て替えや市街地再開発事業、東口ではペデストリアンデッキの新設などの整備が進み、注目を集めている。JRと市、民間事業者とが連携を図り、市民や利用者のニーズを見極めながら駅を中心としたにぎわいづくりの方策について知恵を絞りたい。