飼料や光熱費の高騰などに伴い、国内の酪農業界が深刻な事態に陥っている。酪農団体でつくる中央酪農会議によると、生乳販売を受託する酪農家は今年10月時点で9960戸となり、2009年10月時点の2万242戸から15年間で半数以下に減少した。本県も10月時点で前年同月比5・8%減の417戸と全国同様にこの15年間で半減している。
本県の年間生乳生産量33万~35万トンは全国2位の酪農県である。経営難で離農が加速すれば牛乳や乳製品の供給不足も懸念される。酪農家への支援と生産維持に官民一体で取り組むとともに、消費拡大に努めることが急務だ。
同会議が11月に実施した全国調査によると、酪農家の6割が赤字経営と回答した。円安の影響で飼料代は20年平均から4割高、原油代などの「光熱水料・動力費」は3割高となり、酪農家の47・9%が離農を検討している。
県が20年度に県内の酪農家626戸を対象にしたアンケートでも、4割が経営上の困難に「飼料費・資材費の高騰」を挙げ、全体の54・4%は後継者がいないと答えた。県畜産振興課は全国調査について「本県でも傾向は同じではないか」と危惧する。
県は酪農家への緊急支援策として、輸入飼料の高騰を考慮し乳牛1頭当たり5350円の助成や、餌のトウモロコシや牧草の自給生産にも1頭当たり5300円を補助するなどしている。離農に歯止めをかけるためにも、各農家の聞き取りを早急に行い県内の実態を把握し、助成の継続や増額を含め検討すべきだ。
また県は23年度から、畜産飼料の自給率向上や堆肥の有効活用に向け、堆肥を作る畜産農家と飼料を生産・提供する耕種農家の連携事業を推進している。飼料作りで農地を探す畜産農家に、水田を提供したい農家をつなぐ。こうした地域内の循環型農業が軌道に乗れば、生乳生産の安定供給の一助にもなるだろう。
同会議の調査に、酪農家から「365日休まず生乳を生産している。牛乳や乳製品を多く消費して」という切実な声があった。特に冬場は冬休みで学校給食がないなど、牛乳の需要も落ち込む。生産者と消費者が交流する場を設け、消費拡大の契機となるイベントを県内各地で開催するなど、関係機関はあらゆる手だてを講じたい。