木造住宅の耐震診断件数が県内で急増している。2024年度は12月末までに300件に達し、過去最多のペースで推移している。

 急増の背景には耐震診断にかかる費用が、本年度から県内全ての市町で全額補助となったことが大きい。昨年元日に起きた能登半島地震で、古い木造住宅が軒並みつぶれた惨状が広く報道されたこともあるだろう。

 過去にも耐震診断件数が増えた年があった。東日本大震災が起きた11年である。今年は木造住宅の耐震基準が大幅に強化されるきっかけとなった、1995年の阪神大震災から30年の節目の年でもある。人々の関心が高まるこの機会に、震災の教訓を未来に生かす取り組みを進めたい。

 この耐震診断は、1981年5月以前の旧耐震基準で建てられた木造2階建て以下の一戸建て住宅が対象。診断士派遣費用の9万6千円全額が補助される。2023年度までは市町ごとに補助額が異なっていた。

 24年度から全市町で全額補助となったが、予算に限りはある。壬生町は見込みの補助件数15件が4月中に埋まり、補正予算で20件分追加した。小山市は5月までに予定の20件に達し、追加の10件分の枠も既に埋まっているという。

 これらの傾向を踏まえ、新年度予算編成では各市町とも多めの耐震診断補助費用を確保すべきであろう。県や国もしっかりと支援すべきだ。

 住宅の耐震化を進める直接の意義は、地震発生時の人的被害を減らすことにある。副次的な効果として、建物の倒壊を原因とする火災延焼や道路閉塞(へいそく)の防止、円滑な救援・消火活動などが期待される。被災者が減れば、被災地で初期支援に参加できる人的資源が増える効果もある。

 耐震診断の結果を生かす取り組みも必要である。危険と判断された場合、その先の改修、建て替えに進めるかどうかである。県内全市町で耐震補強、建て替え工事に対して助成制度があるが、利用者にとって使いやすい制度であるか、検証が必要だ。

 国土交通省によると、本県の住宅耐震化率は25年度で目標95%に対し、20年度末で89%。90%台半ばの宇都宮市、下野市などに対し、那珂川町や茂木町は70%台前半と大きな差がある。この地域差を可能な限りなくす努力も、今後の課題となるだろう。